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2008年04月17日(木) 00時00分

「出産」を映画に読売新聞

 日本や世界各地の出産事情を紹介する記録映画が相次いで公開される。出産間もない母親の心情を取材したり、医療機関に頼らず自力で産む女性の様子を追ったり。様々な社会的制約がある中でも、子を産み、育てる母親たちのたくましい姿が感動的だ。

NPOがママ40人の記録

 今年完成した「bloom 生まれたのは私」は、出産間もない母親たちの思いを紹介する記録映画。子育ての情報発信などを行うNPO法人「子育てコンビニ」(東京都三鷹市)が製作した。

 子育てイベントに参加した初産の母親を中心に、約40人へのインタビューを収録した。「私、お母さんになっちゃった」と、母親になることにとまどう女性や、職場のキャリアに影響するのではないかと悩む女性など、子を産んで間もない母親たちの生き生きとした声を伝えている。映画に登場する働く母親の多くが、近所に住んでいる親に子育てを助けてもらっている実情もわかる。

 映画を作りながら、同法人は昨年、出産間もない母親138人にアンケートを実施した。子育てで幸せと思うときのある人が124人いた一方、不安に思うことがあると答えた人も83人おり、揺れる思いをしながら子育てをしている実情が浮かんできた。

 同法人では「出産直後の母親の本当の姿や思いを伝えたい」と約250万円をかけて映画を製作した。「出産や育児に関する情報は多いが、核家族化が進み、地域コミュニティーも希薄になり、子を産んだ母親たちは孤立しがち。こうした女性たちの声を社会に届けたい」と、プロデューサーを務めた同法人代表理事の小林七子さん。

 「bloom」は5月に東京で上映会を行い、貸し出しにも応じている。問い合わせは、「子育てコンビニ」(0422・41・7021)へ。

仏の監督10か国で撮影

 東京・有楽町の映画館「シャンテ・シネ」で19日から公開される「プルミエール 私たちの出産」は、フランス人映画監督が約2年かけ、日本を含む世界10か国で出産する女性の姿を追った。

 例えば、30歳代のメキシコ人女性は、イルカに見守られながら水中で出産。生まれた赤ちゃんに、イルカが優しく寄り添ってくるシーンが印象的だ。40歳のタンザニアの女性は、10人の妻を持つ夫の子を簡素な小屋で産む。現地の風習で、出産後4か月間、赤ちゃんと一緒にその小屋にこもらなければならない。

 古民家で昔ながらの方法で出産する日本人女性や、年に4万5000件の出産を扱う産院で子どもを産むベトナム人女性の姿なども紹介。「国の経済状態や風習などによって、出産方法は様々だが、命を紡ぐことの普遍的なすばらしさを描きたかった」とジル・ド・メストル監督は話す。

 出産や子育ての映画について、東京都内で出産準備クラスを主宰する大葉ナナコさんは、「日本では病院での出産が一般的だが、子を産むことがマニュアル通りの行為ではなく、ドラマチックな営みであることを映画を通して知ってほしい」と話している。

http://www.yomiuri.co.jp/komachi/news/mixnews/20080417ok04.htm