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2008年04月16日(水) 17時10分

春の大学にはびこる統一協会勧誘〜“キャンパス・カルト”に気をつけろ!(1)オーマイニュース

 草木も芽吹く新緑の4月。大学内ではサークルなどの勧誘活動が活発になる。その中に混じって、学生信者獲得をもくろむカルト的な宗教団体による、正体を隠した勧誘活動も、まるで毒キノコのように大学内に芽吹くのも、この季節。

 多くの大学では例年、学生に注意喚起を呼びかけるが、具体的な団体名を提示しないケースが多い。そこで、大学生への勧誘活動が問題視されているカルト的集団(宗教団体とは限らない)について、できる限り具体的な団体名を挙げながら、その問題点をリポートする。

勧誘する様子など、ほかの写真も見る

■統一協会は「親泣かせ」一筋40余年

 大学内で問題視されるカルト宗教として最も悪名高いのが通称「統一協会(統一教会)」こと宗教法人世界基督教統一神霊協会だ。教祖・文鮮明が韓国で創始した教団で、特に日本では、先祖の霊などを口実に信者を脅して高額な印鑑・数珠・多宝塔などを売りつけたり献金をせびったりする。いわば「霊感商法の大御所」だ。

 ひとりの信者から数百万円・数千万円規模のもの金銭を巻き上げることも珍しくない。4月10日にも、統一協会に2億2000万円を献金したとする女性が損害賠償を求めていた裁判で、統一協会は事実上の慰謝料とも言える1000万円を上乗せした金額で和解したばかり。

 統一協会は大学内外を問わず、正体を隠した勧誘活動を行っている。大学内での勧誘については、なんと40年以上も前から問題視されつづけている。

 1960年代半ばに統一協会が大学内組織「原理研究会(通称CARP)」を設立して以降、入信した学生の家出や学業放棄が続出。教祖が決めた相手と結婚する「合同結婚式」に参加し、親に相談なく結婚してしまうケースもあった。そのため「親泣かせの原理運動」といった言葉も生まれ、学生の親や支援者らが反統一協会・信者救出のための組織も生まれた。

■学内アンケートに注意

 統一協会は、「○○大学CARP」などの名称で学生サークルを装う。しかし、学内ではなく近隣のアパートや雑居ビルを拠点として、他大学に所属する信者や学生ですらない信者や教団関係者が運営しているケースが多い。

 勧誘の際には、イベントサークルや「社会のこととか人生について考えるサークル」を装うほか、「学生生活に関するアンケート」といった口実で近づいてくる。そのやりとりで「脈あり」と感じた学生がいれば、拠点マンションなどに連れて行くのだ。

 90年代末、まだ学生だった記者は、彼らのアンケートに答えて、拠点マンションまでついて行ったことがある。

「詳しい話をしてくれる先生が、ちょうど時間ができたので、ここに来て話をしてくれる」

 そんな口実で、明らかに学生ではない30代とおぼしきスーツ姿の男性が現れ、「いまの世の中がいかに間違っているか」をレクチャーされ、延々2時間にわたって話を聞かされた。ここですぐに入信させられるわけではないが、勧誘についていくと「オトナ」が出てくるというのも、彼らの勧誘の常套手段のひとつだ。

■「洗脳と収奪」で一石二鳥?

 統一協会系サークルにかかわりをもつと、ビデオセンターと呼ばれる拠点でビデオ学習などをさせられ、「2daysセミナー」「4daysセミナー」といった宿泊セミナーへと進む。それまで彼らは、統一協会という名称ばかりか、宗教団体であることすら明かさないことが多い。正体を明かすのは、勧誘相手を褒めまくったり親身に相談に乗るような姿勢を見せて警戒心を取り除き、ある程度、組織の活動に巻き込んだ後だ。

 さらに深くかかわると、アパートの一室で共同生活をさせられ、「野の花会」「SHINZEN(しんぜん会)」といった関連団体の名称で民家を訪問し、募金活動やチャリティー名目での物品販売に従事させられる。夜の繁華街やターミナル駅周辺で「手相の勉強をしています」と通行人に声をかける勧誘活動も、信者の「仕事」だ。

 寝る時間さえ満足に与えられない“タコ部屋労働”のような環境では、信者は外界との交流も持てず、活動の問題点について深く考える余裕もなくなる。この活動によって、統一協会に労働力を提供させられると同時に、「洗脳」をより強固なものにされてしまう。

 しかも「手相」による勧誘活動は、新たな霊感商法被害を生む。貴重な青春時代に時間とカネと労働力を教団に収奪された上に、反社会的行為の片棒も担がされてしまうのだ。1980年代後半以降、こうした元信者らが統一協会を相手に全国で「青春を返せ訴訟」を起こしている。和解で終了しているケースもあるが、少なくとも岡山・札幌・新潟で起こされた「青春を返せ訴訟」については統一協会の敗訴が確定している。

■誰でも被害者になりうる

 「深刻な悩みや強い依存心を持った人が宗教にハマる」。入信後に依存心を強められてしまった後の信者だけを見れば、こうした印象を抱くかもしれないが、実際には、もともと依存心の強かった人だけが入信しているとは限らない。正体を隠して、親身になってくれる友人を装って近づいてくる手口は、誰が引っかかってもおかしくはないのだ。「自分だけは大丈夫」などと油断しないでほしい。

 勧誘の具体的な手口は、団体によってで異なる部分もある。団体名や実態を隠し、ウソをついて勧誘してくるため、注意すべき団体の名前を覚えてるだけでは充分な対策にはならない。勧誘してくる団体が何であれ、不審な点がないか常に注意深く観察する必要がある。この点については、シリーズの終盤でまとめて解説する。

 ひとまず統一協会については、CARPとアンケートと手相キャッチに気をつけろ!

  ◇

 本シリーズでは、現役の大学生・大学関係者からの情報を募集します。学内で怪しいチラシを見つけたり勧誘を受けた方は、情報や体験談をお寄せください。このシリーズで取り上げていない団体に関する情報が多く寄せられた場合には、編集部でその団体の正体を調査し、連載の中で「最新事情」としてリポートします。

情報提供の宛先:
オーマイニュース編集部
「“キャンパス・カルト”に気をつけろ!」係(omnj-info@ohmynews.co.jp)

※新聞報道などでは、統一協会の名称を「統一教会」と表記するケースが大半で、統一協会自身も略称では「教会」と表記します。このシリーズでは、統一協会の正式名称が「世界基督教統一神霊協会」であることと、新入生が統一協会問題について調べる際に「協会」の表記も知っていた方が有益との判断から、記事中の表記を「協会」で統一します。

(記者:藤倉 善郎)

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