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2008年04月16日(水) 10時50分

産婦人科医師不足は女医対策が急務オーマイニュース

 産婦人科医師不足による分娩施設の減少が問題になるなか、医師不足に現場はどう対応し、問題を解消していくかを話し合うシンポジウム「産婦人科医不足の解消を目指して」が15日、第60回日本産科婦人科学会総会(横浜市)で開かれた。訴訟リスクや激務のイメージから、減る一方の産婦人科志望の学生をどう増やすか、また、出産・育児で離職する女性医師をどう現場につなぎとめるかが議論された。

 産婦人科医の男女比は1:2で女性が多く、20代だと70%、30代だと50%を占める。だが、女性医師が出産・育児を経て働けるかというと、週に何度も当直が入る現在の労働環境では続けられない。このためやむなく離職する女性医師が多く、結果として人手不足に陥った病院が分娩の取り扱いをやめるケースが相次いでいる。

 女性医師が求める勤務支援について発言した岡山大学の関典子氏は、同大産婦人科に所属していた、またはしている女性医師で、常勤で働く希望を持っている人は70%近くいるが、実際に常勤で働けている人は8.1%に過ぎないことを紹介。

 勤務体制や家事育児のサポート、家族の理解などの問題を理由に挙げながらも、「多くの女性医師が、『現状の過酷な労働環境では、当直回数を減らしてほしいなどの希望はとても言えない』と、ほかの医師への気兼ねから復帰をあきらめていることが深刻」と指摘。当直明けの休みの確保や、休日夜間の分娩に主治医を呼び出さなくても当直医が対応できる体制、院内保育所の整備など、男性医師にも利点のある労働環境の改善が必要と話した。

 一方、大阪厚生年金病院の小川晴幾氏は、労働環境の改善によって同院の人手不足を解消した経験を報告。

 2年前には分娩取りやめを検討するほど人が足りなかった同院では、子育て中も正規雇用のままでおく、1日3時間週3日などのフレキシブルな勤務体制を保証する、子育て女医には職員駐車場の優先利用権を与える、など数々の支援策を打ち出した。

 さらに、「夕方5時になったら、たとえ手術中でも分娩中でも女性医師は帰らせる」と、支援の実践を徹底。充実した就労環境を示した結果、2年前に5人だった医師数(うち1人は産休、2人は育児中)を10人に倍増した。

 「育児中の女性医師に、出産前と同じことをやってもらおうとすると無理がある。だが、彼女たちがいないと産婦人科は回らない。だから、育児中の女性医師には男性医師を助けてもらおうと頭を切り替えた。支援を徹底して、それを全員で実践することが大事」
と小川氏は話した。

 また、産婦人科志望者を増やす対策として、医学部4年生ごろから産婦人科の魅力を積極的にアピールすること、研修医には疲れた顔は見せず、情熱を持って指導にあたること、男子学生の志望者が増えるよう、パンフレットやホームページのモデルに男性医師の登場回数を多くすること、などの地道な案が真剣に話し合われた。

  ◇

 日本の産婦人科医師数は、1990年以降2006年までにおよそ20%減少した。少子化でお産の数も10%減っているが、医師1人あたりの分娩取り扱い件数は増えている状況だ。しかも高齢出産など難しい事例も増えている。医師が確保できず、分娩の取り扱いをやめる医療機関は相次いでおり、2005年度の全国の分娩施設数は、1993年に比べ、病院が25.4%、診療所が35.3%減少した(厚労省医療施設調査、同シンポ基調講演のデータから)。

(記者:軸丸 靖子)

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