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2008年04月16日(水) 10時48分

「死刑を迫られる日」はすぐそこまで来ているオーマイニュース

 2008年4月10日、鳩山法務大臣は在任7カ月で10人目の死刑執行をしました。

 死刑を命じることは法務大臣の重要な職務の1つです。それにも関わらず、法務大臣が就任するたび、「死刑を執行する大臣か、しない大臣か」が注目されます。中には会見で死刑執行を拒否した大臣もいます。

 「死刑」に悩むのは法務大臣ばかりではありません。死刑を言い渡す裁判官も重い役割を背負っています。現場で執行にあたる刑務官も、仕事とはいえ、つらい職務だろうと思います。

 その中で法務行政の最高責任者である法務大臣が、己だけ責務に背を向けることは、法の根幹を揺るがす行為であり、大臣として恥ずべきことです。

 今回の執行により、残った死刑確定者数は104名。死刑は本来、刑の確定から6カ月以内に執行されなければならないと定められています。

 しかし、現状、執行までは平均7年〜8年ほどと言われています。裁判によって、死刑判決が確定しながら、適正に執行されていない現実がここにあります。

 裁判員制度が開始されれば、私たちが現実に判決を決める役割の一端を担うことになります。そこには死刑という選択肢が当然のように存在します。仮に私たちが死刑判決を下し、その刑の執行を法務大臣が拒めば、私たちの思いは時の法務大臣によって、ないがしろにされることもあるということです。

 私は鳩山大臣のさまざまな発言を聞くに付け、鳩山氏が法務大臣として死刑執行の権限を行使することには、いささか懸念を持っています。法務大臣の資質を疑うなど僭越(せんえつ)ですが、命の重さを軽んじる発言などは厳に慎むべきです。

 100名を超える死刑確定者を今後どうしていくのか。刑は執行するのか。するなら、いつするのか。しないなら、今後はどのような処分に変えるのか。そのための国民の合意をどう得ていくのか。

 蛇の生殺しのような状態を続けている非道を考えることも必要です。

 一方、「私たちを裁判に参加させて、自ら死刑の判断を下させることで、国民の死刑に対する抵抗感を、和らげていこうという思惑がある」という話も聞いたことがあります。また、死刑執行を増やし、国民に「死刑執行は当たり前」という意識を持たせる意図があるとも言われています。

 私たちは知らないうちに死刑を容認する方向に、マインドコントロールされているのでしょうか。

 世界は死刑廃止に向かっているとも言われます。韓国は昨年「死刑廃止宣言」をしました。日本国民はこのまま死刑制度を継続していきますか? 終身刑などの選択肢は必要ありませんか? 刑期の50年・100年はなくてもいいですか?

 私たちが「死刑を迫られる日」はもうそこまで来ています。

(記者:星野 文孝)

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