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2008年04月15日(火) 00時00分

無線LANで場所を知る読売新聞

 自分の行動を、いまいる場所の情報=位置情報と共に記録できたら便利だ。すでに携帯電話などでは、人工衛星で得た位置情報を基に、写真を撮影地点を一緒に記録するような機能が実現しているが、実は無線LANでも位置の特定ができることは、あまり知られていない。

 ソニーが育てたその技術を携えて起業したクウジット社長の末吉隆彦さんに、今後の展開などを聞いた。


末吉隆彦  すえよし・たかひこ
クウジット株式会社 代表取締役社長
1968年、東京都中野区生まれ。慶応義塾大学理工学部計算機科学科修士課程修了。1992年ソニー入社。ソフトウェアプロジェクトリーダーとして、VAIO C1などのノートパソコン商品化に尽力。2005年よりソニーコンピュータサイエンス研究所へ。2007年、「PlaceEngine」のサービス立ち上げと企画運営を開始し、同年7月、クウジット株式会社を設立、代表取締役社長就任。「PlaceEngine」は2008年、日経BP技術賞の情報通信部門賞を受賞。
GPSなしでも位置を推定
——位置情報を知る技術というと、携帯電話やカーナビに使われているGPS(全地球測位システム)がまず思い浮かびます。

末吉 そうですね。GPSは人工衛星が発している電波を受信して、位置を割り出します。このため天空が開けた場所でないと動きません。それも複数の衛星の電波を同時に捕らえなければなりませんので、地下や屋内はもちろん、都会のビル群の中でも計測は難しくなります。GPSと違って、我々が開発したPlaceEngineの技術は、測位に無線LANのアクセスポイントが発する電波を利用するので、地下や都会に強いという特長があります。

——しかし無線LANのアクセスポイントは、数が少ないのではないでしょうか。

末吉 そんなことはありません。お金を払って使う無線LANのアクセスポイント(ホットスポット)は、確かに全国には数千か所しかありません。しかしPlaceEngineはそうしたホットスポットにつなげて使うものではありません。位置を割り出すために利用するアクセスポイントは、オフィスや個人によって使用されているものです。住宅街などでパソコンから無線LANのアクセスポイントを検索すると、かなり多くのアクセスポイントがあることに気付いた人もいらっしゃるのではないでしょうか。

——確かに。周囲のアクセスポイントがズラリと検索されることがあります。

末吉 その通りです。それらのアクセスポイントは、つなげてインターネットを利用することはできなくても、周囲と常に情報をやり取りしています。それが何を意味するかというと、アクセスポイントに割り当てられた固有アドレス(MACアドレス)などが分かるということです。無線LANが使われていれば、どんな場所でもそうした情報を取得することができます。

——アクセスポイントの情報からどのように位置を知るのですか。

末吉 無線LANを検索すれば、受信できるアクセスポイントのリストができますね。このリストを既存のアクセスポイントのリストと照らし合わせます。それに加えて、各アクセスポイントから届く電波の強さを利用します。受信できるアクセスポイントのリストと電波の強さを分析することにより、位置を割り出すのが私たちの技術です。

——場所ごとに、アクセスポイントのリストと電波強度の組み合わせが異なるということですね。

http://www.yomiuri.co.jp/net/interview/20080415nt0d.htm