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2008年04月13日(日) 03時02分

犯人の似顔絵、特徴くっきり 警視庁DBの効果続々朝日新聞

 捜査員が描く犯人の似顔絵が捜査現場で効果をあげている。警視庁は昨年、全国でも珍しい似顔絵データベースの運用を始めた。モンタージュ写真などより顔の特徴が出やすく、情報提供につながるという。科学捜査の時代に、昔ながらの手法の重要さが増している。

似顔絵は色鉛筆を使いながら1時間ほどで仕上げる=東京・桜田門の警視庁

 07年9月、東京都江東区内で女性の体を触ったとして、男が強制わいせつ容疑で逮捕された。警視庁鑑識課が、路上で女性に声をかける手口の事件の犯人の似顔絵をデータベースで検索したところ、この事件と条件の合う数件がヒット。このうち、同区内で07年2月に起きた強姦(ごうかん)事件の似顔絵が男とそっくりだった。事件の現場に残された証拠とも一致し、男は強姦容疑で再逮捕された。

 データベースは07年6月、数が増える一方の似顔絵を有効活用するため導入された。未解決事件の約1600枚が現在登録されている。似顔絵を画像ファイルにしてコンピューターに入力し、事件ごとに犯人の性別や年代、身長や手口、脅迫の文言など特徴的な言動もあわせて記録する。

 検索では、まず手口などのデータで絞り込む。ヒットした似顔絵を捜査員が一つひとつ見比べ、近いものを探す。

 「3億円事件」などで知られるモンタージュ写真と比べ、似顔絵は優れた点が多いという。写真を合成してつくるモンタージュは作製に機械が必要で、それを見た人が、わずかな特徴の違いでも別人と思ってしまうことがある。これに比べ、似顔絵は特徴が強調されてイメージが広がりやすく、情報提供につながるうえ、手慣れた捜査員が描けば1時間以内にできる。現在は9割以上が似顔絵だ。

 警視庁では07年に1248枚の似顔絵を作製し、03年に比べ約3割増えた。事件解決に直接結びついたのは、03年が45枚で、その後徐々に増え、07年は59枚となった。

 同庁は00年から、描く技術を身につけた職員を指定する「似顔絵捜査員制度」を導入した。これまで185人が指定され、大半の警察署に配置されている。鑑識課に4人いる専門捜査員の1人、谷川徹三巡査部長(36)は「自分の似顔絵を見た容疑者に『これ、おれだ』と言われたこともある。誘導したり余計な質問をしたりせず、目撃者の記憶を壊さないで絵にすることが大切」と話す。(大谷聡) アサヒ・コムトップへ

http://www.asahi.com/national/update/0412/TKY200804120194.html