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2008年04月12日(土) 15時00分

首相、欧州歴訪ままならず ねじれ国会が「足かせ」に朝日新聞

 今月末からの大型連休中に予定している福田首相の欧州歴訪日程が、「ねじれ国会」のあおりで固まらない。7月の北海道洞爺湖サミットを控え、議長国として主要国首脳(G8)との信頼関係を築くことに影響が出かねない。

  

 8年に1度のサミット議長国は、サミット前に参加国を中心に積極的な外遊を繰り広げるのが通例だ。00年7月の九州・沖縄サミットの際は、就任したばかりの森首相(当時)が、大型連休中に9日間の日程で欧米7カ国を駆け足で回った。「首脳と信頼関係を醸成するうえで極めて重要な機会。事前に名刺を配っておく必要がある」(外務省幹部)。今回のサミットでは、温室効果ガス削減に向けた国際的な枠組みづくりで意見集約がどこまで進むかが最大の焦点。議長国日本としては、環境問題に積極的な欧州各国首脳と事前に会い、この問題に慎重な米国とのパイプ役になることが期待されている。

 福田首相は連休前半にロシア、後半に英国やフランス、ドイツなどの訪問を検討している。ところが、ガソリン税などの暫定税率を維持する法案が野党の反対で3月末までに成立しなかったことが誤算だった。税率を復活させる再議決が可能になるのは今月29日から。再議決後、民主党から参院に首相問責決議案が出されれば、日本に足止めされる可能性がある。

 さらに5月6日から中国の胡錦濤(フー・チンタオ)国家主席が来日するため、連休後半もほとんど使えない。このままでは、サミット本番でいきなり、フランスのサルコジ大統領ら首脳に「初めまして」とあいさつするケースも出てきそうだ。政府は国会が閉会する6月中旬以降、集中的に外遊することも視野に入れ始めた。

 首相は元々、外務政務次官や自民党外交部会長を歴任した「外交族」。小泉内閣の官房長官当時は、「影の外相」と呼ばれた。

 しかし、今年に入ってからの外遊は、1月に世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)でスイス、2月に大統領就任式出席で韓国を訪れただけ。首相の代役となる高村外相も、今年の外遊は12日からのロシア訪問を含めても4回。連休中の外遊も首相同様、国会の状況次第だ。

 そもそも首相や閣僚の外遊は閣議了解で正式に決まる。しかし、事前に衆参両院の議院運営委員会で内々に了承を得ておくのが慣例だ。安倍前首相は昨年、9月に退陣する直前のアジア太平洋経済協力会議(APEC)を含め、年初から計6回、延べ16カ国を外遊しているが、ねじれ国会で以前に比べ、国会審議に時間がかかるようになったことに加え、「野党が多数を占める参院で了承が得られるのか」という懸念も心理的要因となり、外遊回数の減少に影響しているようだ。

 外務省によると、他のG8の場合、首脳や閣僚の外遊に「国会了承」は必要ないという。ちなみに同省の資料などでは、昨年1年間の首脳の延べ訪問国数は、米国のブッシュ大統領が少なくとも計14カ国。英国はブレア、ブラウン両首相で計23カ国で、フランスはシラク、サルコジ両大統領で計29カ国に上る。(南島信也) アサヒ・コムトップへ

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