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2008年04月11日(金) 12時00分

リチウムイオン電池の性能3割向上、寿命2倍に:戸田工業にライセンス供与WIRED VISION

現在のリチウムイオン電池では、安全性と容量アップという、矛盾する2つの要素が絶えず葛藤している。

発火の危険性が低い次世代バッテリーの開発が行なわれており、その電極材料として例えばリン酸鉄リチウム(LiFePO4)があるが、リン酸鉄リチウムを使うと、安全性は大幅に向上する一方で容量は従来品より少なくなる。

イリノイ州アルゴンヌにあるアルゴンヌ国立研究所(ANL)は、現行品よりも爆発性が低いうえに、性能は30%アップするという独自のリチウムイオン電極に関する技術を、広島県にある化学素材メーカーの戸田工業にライセンス供与した。

この新素材を生み出した手法は単純なもので、既存の電極から、過熱が起こりやすい酸化コバルトを一部取り除き、酸化マンガンに置き換えている。[ほとんどのリチウムイオン電池で、発電量を大きくするために用いられている酸化コバルトは爆発を起こしやすいため、特に車両には使いにくい。ナノテクを利用してコバルトを鉄に置き換えた、安全性の高いリチウムオン電池を開発しているA123Systems社などについての過去記事(日本語版記事)はこちら]

[酸化コバルトを利用している場合、何らかの原因によって電池セル内部で短絡不良が発生したとき、酸素が放出されて急速に温度が上昇するが、]酸化マンガンは、温度が上がると酸素をよりしっかりと保持する。これはつまり、電池の温度が上昇し始めても、発火への連鎖反応を促進しないということだ。さらに、この安定性により、電池の充電可能回数が従来の2倍(およそ1500回)にまでアップする。

『Technology Review』の記事「従来より寿命の長いノートパソコン用電池」を参考にした。

[戸田工業のプレスリリースによると、近年のコバルトなどの高騰と、容量・安全性などの点からNiCoMnO2系(ニッケル・コバルト・マンガン三元系)への移行が進んでおり、今回のライセンス取得はその一環という。]

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080411-00000001-wvn-sci