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2008年04月11日(金) 15時48分

【法廷から】パチンコで借金苦…模造爆弾で襲った先は産経新聞

 金に困って罪を犯す被告は少なくない。だが、金に困る理由は人それぞれだ。今回のケースは、パチンコにはまり、パチンコ景品交換所を襲ってしまった。
 強盗未遂、強盗予備、銃刀法違反の罪に問われた男性被告(43)の初公判を10日、東京地裁で傍聴した。
 起訴状によると、被告は平成19年12月22日、東京都世田谷区の景品交換所で、模造爆弾を手に持って、女性店員(55)に「300万円出しなさい。爆破する」と書かれた紙を示した。また、20年1月14日には、中野区の景品交換所を襲う目的で、刃渡り12・3センチの果物ナイフなどを所持した。いずれの起訴事実も認めた。
 情状証人として、被告の母親と被告の20数年来の友人が証言台に立った。
 弁護人「被告はどんな性格でしたか」
 母親「世話を焼かせない子。自発的な子だった。信じていました」
 友人も被告の人となりを証言した。
 弁護人「被告の人柄は?」
 友人「大学時代からグループ内でリーダー。兄貴的存在だった」
 そんな被告を、借金が犯罪に走らせた。
 検察側の証拠によると、被告にはパチンコなどで作った借金が350万円あり、18年6月、弁護士に債務整理を依頼して150万円に圧縮した。
 検察官「パチンコが好きと知っていましたか」
 母親「知りませんでした」
 17年12月、被告は「パチンコ必勝法がある」と持ち掛けられ、業者から70万円をだまし取られた。19年7月、この業者らしき人物から「金を返還するが、解約のために7万8000円を支払う必要がある」と電話があり、2回計15万6000円を振り込み、再び詐欺の被害に遭った。
 これら被害で生活に困窮した被告は、模造爆弾を使った強盗を思いつく。模造爆弾はカップ酒の瓶にくぎや粘土を入れたもので、映像制作会社で働いていたときに作ったことがあるものだった。
 弁護人「事件を知ってどう思いましたか」
 友人「犯罪と縁のない友人がこんなことをしたことが、何日か信じられなかった」
 被告は何でも自分で抱え込んで、解決しようとする性格だったようだ。
 弁護人「事件の原因は何と思いますか」
 友人「パチンコの件は知らなかった。自分で問題を抱え込んでしまっていたのではないか」
 弁護人「繰り返さないためのアドバイスは何かありますか」
 友人「昔からの友人がいるので、相談してさらけ出してほしい」
 弁護人「被告に言いたいことはありますか」
 友人「20年の付き合いだから、いいところばかり見せずに、何でも言ってくれればみんな助けてくれる」
 母親も被告に向けて更生へのエールを送った。
 弁護人「最後に被告に言いたいことがあれば述べてください」
 母親「あなたの病気はパチンコに凝ったこと。カード会社でカードを作らない。それをしっかり食い止めてほしいと思う」
 映像制作会社で働いていた被告は「撮影現場には気楽にやればいいという空気があるが、1つのことをやり出すと徹夜をすることもある。まじめすぎる」(友人の証言)という仕事ぶりだった。のめり込む性格が、パチンコでも勝つまで徹底的にやる悪癖を生んだのだろうか。
 次回公判は23日に開かれ、被告人質問が行われる。   (末崎光喜)

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