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2008年04月11日(金) 01時40分

「靖国」刀匠 議員「本人が削除希望」監督「なぜ変心」朝日新聞

 上映中止が問題となった映画「靖国」の中心的な登場人物で高知県内に住む刀匠の出演をめぐり、有村治子参院議員(自民)が国会で「刀匠本人が出演場面を外してほしいと希望している」と取り上げた。これに対し、制作した李纓(リ・イン)監督は10日、「刀匠は納得してくれていた。変心した理由がわからない」と語った。

 刀匠は映画の冒頭から登場し、作業場で刀を制作する様子などが描かれている。

 有村議員は3月27日、参院内閣委員会で「刀匠は作品から(自分の)映像を一切外して欲しいと希望している」と取り上げた。有村議員はその前々日に刀匠本人に確認を取ったという。

 10日、朝日新聞の取材に応じた刀匠(90)とその妻(83)によると、05年に李監督側から出演依頼の手紙が届いた。戦後、伝承されなくなった靖国刀の最後の刀匠として取り上げたいとの内容だった。刀匠は承諾し、李監督は靖国刀を制作している場面などを撮影した。

 その後、李監督らが自宅に来て映像を見せたが、靖国神社に参拝する小泉首相(当時)とそれに反対する人たちに交じって刀を作る映像が流れていたため、「撮影を受けた趣旨と違う」と出演場面と名前の削除を頼んだという。

 3月末と今月9日に、有村議員から「国会で映画を審議しているからどう考えているのか意見を聞きたい」という内容の電話を受けた。刀匠は「出演は本意ではない。名前と映像を省いてほしいし、完成品を見たいと思っている」と伝えたという。

 刀匠は「靖国刀の伝統技術や価値を後世に伝えてくれるものと思っていた。『靖国問題』と結びつけるとは思っていなかった。違う趣旨で映画が作られ、『靖国問題』に巻き込まれた」と話した。

 有村議員は9日、自身のサイトに「刀匠ご夫妻を変心させる意図も働きかけも一切ない」とする文書を載せた。

 李監督は10日、東京都内で記者会見し、刀匠との交渉経緯を説明。昨春、ビデオを刀匠夫婦に見せ、作品の意義、監督が考える靖国問題の意義などを伝えた。今年2月に刀匠を訪ねた際、夫婦は上映に不安を感じている様子だったが、じっくり話し合った。最後は、刀匠がチラシに自身の写真と登場人物に名前があるのを見て、「上映頑張ってください」と言ったという。

 3月上旬にも公開パンフレット用に刀匠からメッセージとして誠心誠意という言葉をもらったと言い、「刀匠の場面がないとこの映画は成立しない。国会議員がどんな話を(刀匠に)したのか。出演者を変心させていいのか」と話した。 アサヒ・コムトップへ

http://www.asahi.com/national/update/0411/TKY200804100360.html