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2008年04月10日(木) 02時33分

<長寿医療制度>新保険証返送6万件 大阪府最多1万6千件毎日新聞

 今月スタートした長寿(後期高齢者)医療制度の保険証が届かないケースが多発している問題で、対象者に届かずに自治体に返送された件数が全国で約6万件(推定含む)に上ることが9日、毎日新聞の調べで分かった。担当窓口には苦情が殺到し、保険料の誤徴収などのミスも相次いで発覚している。新制度は開始当初から混乱が続いている。

 新制度の対象は、75歳以上と、65〜74歳の障害認定を受けた計約1300万人。多くの自治体が保険証を郵送する際、本人の手に確実に届くよう「転送不要」とした。このため住民票の届け出と異なる場所に住む対象者らに保険証が届かず、自治体に返送されるケースが多いとみられる。

 各都道府県ごとに制度を運用する後期高齢者医療広域連合などに取材した結果、未着分は計6万3649件に上る。都道府県別では、大阪府が1万6000件で最多。神奈川県1万3700件、愛知県9450件、東京都7600件−−が続く。未着を把握しているが、集計できていない県も多数あった。

 秋田県の広域連合によると、対象者から「中身を確認せずに捨てた」との申告があった。福島市でも「ダイレクトメールと勘違いし捨てた」というケースがあり、制度周知が徹底していなかったことがうかがえる。

 制度自体への苦情も多い。75歳以上の高齢者の負担増になるケースもあるため、「年寄りに死ねというのか」(福岡)、「『消えた年金』問題が解決していないのに、年金から徴収するとは何事か」(長崎)などの抗議が寄せられている。

 各広域連合は電話増設などをして対応しているが、追いつかないのが現状だ。長野では3月中旬、電話回線を4回線から7回線に増設した。千葉は1日以降、電話が一日中鳴りっぱなしといい「職員3人で対応しているが間に合わない」と悲鳴を上げている。

 保険料の誤徴収など市町村側のミスも相次ぎ発覚している。松山市は、データ処理のミスで218人を保険料の天引き対象と誤認定。データ修正が間に合わず、15日の天引き後、「速やかに還付する」という。埼玉県志木市などでも同様のトラブルがあった。

 厚生労働省は9日、保険証を交付する都道府県ごとの広域連合に対し、トラブルの事例と対応方法を紹介する事務連絡を出した。

 厚労省によると、届かない原因は(1)本人が誤って捨ててしまう(2)保険証が入った郵便が本人不在やあて先不明で戻る−−の2通りがある。(1)の場合は本人に再交付の申請をしてもらい、(2)の場合は電話で本人の所在を確認し、改めて郵送するか取りに来てもらう。【清水健二】

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080410-00000020-mai-soci