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2008年04月09日(水) 08時00分

道路財源の首相方針に揺れる自民 「一般財源」防衛省 不都合はなし産経新聞

 福田康夫首相が打ち出した道路特定財源を平成21年度から一般財源化する方針が、自民党を揺るがしている。道路整備事業は自民党の「権力の源泉」とされてきただけに、道路族は「道路整備は中長期ビジョンが必要だ」(中堅)と道路特定財源を死守する構えだが、一般財源化すると道路は本当につくれなくなるのか。一般財源を元に着実に防衛力整備を進めている防衛予算から新しい道路事業のあり方を学ぶことができるのではないか。(加納宏幸)

 「首相が一般財源化の方針を明確に打ち出した以上、党総務会でもこの方針を了承すべきではないか」

 8日の自民党総務会で、山本一太参院議員が首相の方針の追認を求めたが、伊吹文明幹事長は遠回しな表現で却下した。現執行部は古賀誠選対委員長、二階俊博総務会長の2人の道路族実力者を抱えるだけに、一般財源化の議論はできるだけ先送りにしたいとの思いがにじむ。

 財政再建のため、一般会計の公共事業が毎年3%ずつ削減される中で、ほぼ一定した税収を確保できる道路特定財源は残された「聖域」といえる。塩川正十郎元財務相の名言「母屋(一般会計)でおかゆを食っているのに離れ(特別会計)ですき焼きを食っておる」で知られるように小泉純一郎元首相、安倍晋三前首相もこの聖域に切り込もうとしたが果たせなかった。

 自民党道路族は、「中長期計画を着実に実行するには特定財源は必要だ」(中堅)と譲らないが、一般会計で中長期計画を反映させている事業は少なくない。

 例えば、防衛予算は、道路整備計画と同じく5年ごとに中期防衛力整備計画(中期防)を策定し、計画に伴う予算総額も閣議決定するが、財源はすべて一般財源だ。防衛省は中期防に基づき毎年財務省と折衝を続け、予算を獲得する。

 政府開発援助(ODA)予算も、政府の長期的なODA戦略を定めた「ODA大綱」に基づき3−5年間の中期政策を策定し、外務省などが毎年予算を獲得している。

 一般財源化の問題点は、社会情勢や経済情勢によって毎年予算がある程度変動し、常に「計画通り」とはいかないことだ。裏を返せば、社会情勢に合わせてメリハリをつけることができるため、政権には「施策をアピールしやすい」というメリットにもなる。

 これに対して、道路特定財源制度があれば、景気にもほとんど左右されずに計画通り事業を進めることが可能だ。国土交通省は、国の道路事業の計画策定や実施の権限だけでなく、地方道路整備臨時交付金などの配分権も握っており、地方自治体に強い影響力を保つことができる。

 これらの道路事業に関与できるのは、国交省と太いパイプを持つ道路族だけで「首相もほとんど影響力を行使できない」(閣僚経験者)とされる。

 自民党の改革派若手は「道路利権を崩す千載一遇のチャンス」と意気込むが、党の集票組織まで組み込まれている道路利権を打ち破るのは、そう簡単ではなさそうだ。

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【用語解説】道路特定財源

 道路特定財源 国や地方の道路整備に使途を限定した税目を指す。田中角栄元首相が衆院議員だった昭和28年、道路事業推進に向け、「受益者負担」を説き、議員立法で揮発油税を特定財源化したのが始まり。その後、地方道路税、自動車取得税、自動車重量税、軽油引取税、石油ガス税が次々に創設された。平成20年度予算の道路特定財源は国・地方で計約5・3兆円。小泉純一郎首相が平成17年12月、一般財源化の方針を示し、安倍晋三前首相が道路事業を上回る税収を一般財源化したが、20年度予算で一般財源化されるのは約1900億円にすぎない。


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