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2008年04月09日(水) 22時40分

自民議員が介入、出演者に“圧力”…「靖国」の李監督憤るスポーツ報知

 映画「靖国 YASUKUNI」の中心的出演者で刀匠の刈谷直治さん(90)夫妻=高知県在住=から有村治子参院議員(自民、比例)が事情を聴き「刈谷さんらは出演シーンの削除を希望している」と主張していることが分かった。李纓(リイン)監督は9日、共同通信のインタビューに応じ「出演を納得してくれていた夫妻を変心させた。許せない介入だ」と訴えた。

 映画は「靖国刀」を作り続ける刈谷さんの姿と靖国神社をめぐる動きを描いたドキュメンタリー。上映中止が相次いでいる上、シーンの削除になれば作品の成立自体を左右する事態で、表現活動と政治の関係が新たな問題として浮上している。

 有村議員によると、刈谷さんとは3月末、電話で話した。李監督はこれに対し「(削除の希望は)信じられない。どうして政治家がそこまで介入するのか」と反発。

 李監督によると、映画は完成後、夫妻に見てもらった。「奥さまは刈谷さんの刀の世界がよく分かっていない面があり(映画の内容に)ショックを受けていたが、説明し2人とも納得してくれた」という。

 その後、今年2月ごろ、夫妻が「この映画は反日」と聞かされ非常に不安がっていると知り、映画の意味をあらためて説明。最終的には「どこでも上映してください」と了承を得たとしている。

 李監督は「ドキュメンタリーで大切なのは人間関係。長い時間をかけ段階を踏んでコミュニケーションをとってきた」と述べ「刈谷さんは非常に優しい、職人の魂を持っている方」とたたえた。

 有村議員は李監督インタビューに先立つ8日、共同通信の取材に「刈谷さんが困惑しているという情報があったため、連絡を取った」と説明、国会議員による接触について「(刈谷さん側には)事前に人を介してコンタクトしてよいか尋ねた」と述べ、慎重な対応だったとした。そして

 また9日夜、共同通信の取材に対し「刀匠に電話して尋ねたが、わたしの話で気持ちが変わったことはないということだった。監督の話は事実無根だ」と話した。

 李監督は1989年以来日本に住む中国人で、日本映画監督協会に所属している。

http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20080409-OHT1T00231.htm