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2008年04月07日(月) 13時44分

月刊『宝島』で警察天下り記事の特集6頁がボツにMyNewsJapan

 松下は4月1日付で、警察庁から昨年天下った竹花豊氏を取締役に昇格させる。松下が事件・事故を起こした際などに便宜をはかってもらうのが狙いというのが一般的な見方で、天下り批判が高まるなか、記事が出るのは松下にとって確かに好ましくない。

 竹花氏は、警察庁時代、石原慎太郎都知事の右腕として副知事に就任し、いわゆる「歌舞伎町浄化作戦」を主導。警察庁生活安全局長を最後に2007年退職、同年3月に松下に「参与」の肩書きで天下った。警察の腐敗を追求してきた寺澤氏によれば、竹花氏は警視総監を狙えるくらい警察庁内での評価が高い実力者で、庁内に睨みが効くため、どの企業もいざ不祥事が起きてしまったときの「保険」として欲しい人材だった。

 こうした、警察組織から企業への天下りは実際にどの程度行われているのか。

 「警察では今後10年間、毎年およそ1万人ずつが定年を迎える。でも交通関係を除けば、他の省庁のように所管の企業との公共事業による明確な利害関係がない分、幅広く一般企業に押し込むしかないはずで、癒着や腐敗の温床になりかねない」(寺澤氏)

 天下りの実態を明らかにするため、寺澤氏は昨年、情報公開請求を繰り返し、警視庁内に天下りを斡旋する専門組織として「人材情報センター」が設置されていることを特定。その部署が過去2年で斡旋した再就職先の組織が分かる文書を、さらに情報公開請求した。

 出てきたのは、2千枚に及ぶ、待遇などが黒塗りとなった求人票。人材情報センターが、かなりシステマチックに再就職を斡旋していることがよく分かる。

 これを企業ごとに揃えて集約し、約4百の企業・団体リストを作成した。天下り先は、松下のほか、NEC、三井物産、双日、博報堂、竹中工務店、コスモスイニシア、アデランスなど、大手もズラリと並び、メディア企業としては読売新聞東京本社の名前も。過去に不祥事を起こした会社が目立つ。読売は寺澤氏の取材に対し、ノーコメントだったという。

 寺澤氏は、旧知の編集者である宮川亨氏の依頼を受け、この特集を月刊『宝島』に掲載することを承諾。1月下旬の企画会議で通り、3月25日発売の5月号に掲載されることが決まった。

 原稿を提出したのは3月14日で、すでにレイアウトが出ていた。タイトルや小見出しのスペースも決まり、表や写真も入れられており、あとは文章を流し込むだけの状態だ。

 だが3月17日、寺澤氏は、宮川氏から電話で「ボツになりました、松下が原因です。松下と宝島は特別な関係にある。すみません。」との連絡を受ける。

 宮川氏の説明によれば、新井浩志編集長が、雑誌担当取締役の関川誠取締役に記事を見せたところ、松下部分の削除を要求。6ページをまるごと差し替えることになり、表紙も変更となった。

 「こんなギリギリになってボツになったのは初めて」という寺澤氏は、松下と宝島側の一方的な理由で被害をこうむった。掲載が見送られたことで、取材先へのお詫びの電話を100本以上入れるのに、まる3日かかったという。

 実際に発売された『宝島』を見ると、松下は見開き2ページ2つを含む、計5ページの広告が載っており、それ以外のナショナルクライアントといえば、ネッツトヨタ、東京ガス、エプソン(記事風広告)くらい。松下が圧倒的なスポンサーだった。これでは批判的な情報は一切、載せられない。読者はメディアリテラシーを身に着けない限り、偏った情報がインプットされてしまうことがよくわかる事例である。

(渡邉正裕)

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