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2008年04月07日(月) 11時24分

田中元弁護士の事務所など家宅捜索始まる読売新聞

 元特捜検事の田中森一(もりかず)・元弁護士(64)(別の詐欺事件で服役中)が、刑事事件の依頼者から9000万円を詐取したとされる事件で、大阪地検特捜部は7日、詐欺容疑で東京都内にある田中元弁護士の事務所など十数か所の捜索を始めた。午後にも、田中元弁護士を取り調べ、逮捕する。

 検察関係者によると、田中元弁護士は2002年10月7日、出資法違反容疑で元部下が摘発され、福岡県警の捜査対象とされた貸金業の男性(45)から相談をもちかけられた。その際、「(多額の現金を持っていることが)警察にばれると、君が店の上がりを受け取っていたことになり、(共犯として)起訴される」などと言い、9000万円をだまし取った疑いが持たれている。

 田中元弁護士は、石油卸商社を巡る手形詐取事件で懲役3年の実刑が確定して弁護士資格を失い、大阪拘置所に収監中。

 田中元弁護士は、東京、大阪両地検の特捜部で数々の汚職事件を手がけ、弁護士転身後は「闇社会の守護神」と呼ばれた。手形詐欺事件で保釈中に出版した自伝「反転」は27万部を売り上げるベストセラーとなったが、周囲では様々なトラブルを抱えていた。

 最高裁の上告棄却決定前の昨年12月。東京都内の講演会で、田中元弁護士は当時の心境を語った。

 「どんな判決でも潔く従う。傲慢(ごうまん)だった僕に反省の機会を与えてくれた。『検察よ、ありがとう』という気持ち」

 収監直前の3月17日に都内で開かれた別の本の出版記念パーティーでは人目をはばかることなく号泣し、旧知の仲間と抱き合って別れを惜しんだという。

 長崎県の離島に生まれ、岡山大に進学。1971年に任官。容疑者を自供に追い込む手腕を買われて配属された東京地検では撚糸(ねんし)工連事件で贈賄容疑者から政界ルートにつながる供述を引き出したという。

 上司と衝突して退官し、88年、弁護士転身。その後は手形詐欺事件で共犯とされた許永中受刑者(61)や射殺された山口組最高幹部とも関係があった。

 一方、昨年6月に出版した「反転」では、手がけた捜査の裏話なども明かし、検察関係者らから「捜査の秘密を、退官後でも軽々しく語るべきではない」との批判も上がっていた。

 保釈中にオーナーとなった地理情報会社「テラ・マトリックス」の出資者とのトラブルで、昨年5月には大阪弁護士会から懲戒処分を受け、「反転」の印税の一部も差し押さえられた。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080407-OYT1T00272.htm