記事登録
2008年04月02日(水) 00時00分

⑲社会派テーマ果敢に挑戦読売新聞

 今年の東京国際アニメフェア(3月27〜30日)会場の隣室では、ドキュメンタリーアニメ『めぐみ』が上映された。北朝鮮による拉致被害者、横田めぐみさん(当時13歳)の両親、滋さん(75)、早紀江さん(72)夫妻の運動の歩みを描く。

 控室にいた大森英敏監督(48)の手には汗がにじんだ。来場者約100人。「最後まで見てもらえるだろうか」。25分の上映が2時間に思えた。エンドロールが流れ、会場がパッと明るくなる。その時、多くの若者が目を赤くしているのを見て、安堵(あんど)がこみ上げた。「拉致という重いテーマも、アニメなら若者にも理解してもらえるということが確信できた」

 原作は「漫画アクション」の同名連載。滋さんの声は声優の山寺宏一さん(46)が無償で引き受けた。「事件の傍観者であってはいけないと思ったから。停滞を脱却し、めぐみさんたちが帰ってくることを心から願います」と訴える。

 社会を良くしようとするアニメはほかにもある。ユネスコ・アジア文化センター(新宿区袋町)は発展途上国向けに、識字向上や環境問題を訴える計4作のアニメを制作。さらに防災の大切さを広めようと、今月中旬、5作目をDVDで発売する。いずれも「アニメの訴える力」に着目した活動だ。

 一連の作品の監督を務めたのは、杉並アニメーションミュージアム館長の鈴木伸一さん(74)。漫画オバQに出てくる「小池さん」のモデルになった人だ。次回は鈴木さんがユネスコの活動を始めたきっかけから。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tokyo23/feature/tokyo231203958795871_02/news/20080403-OYT8T00144.htm