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2008年04月02日(水) 19時55分

トヨタ・ホンダのアキレス腱 ライトトラック系の米国現地生産J-CASTニュース

 米国経済の減速感が強まるなか、これまで快調に収益を拡大してきた日本車メーカーの先行きに暗雲がたれこめている。米国はトヨタ自動車、ホンダ、日産自動車が連結営業利益の半分以上を稼ぎ出すと見られる超重要市場。頼りになる収益源があるからこそ、各社は莫大な費用がかかる環境・安全技術の研究開発や新興国での工場建設といった先行投資をすることができた。その大黒柱が揺らぐとなれば連結経営全体の見直しが必要になってくる。

■燃費の悪いライトトラックの販売は落ち込む

 米国の新車販売は2月まで4カ月連続して前年実績を下回った。2008年は10年ぶりに1600万台の大台を割り込むとの見方が支配的で、なかには1500万台割れという悲観的な予測すらある。

 トヨタ自動車はいまのところ米国新車市場について「サブプライム問題が少しずつ解決し後半には回復してくる」(渡辺捷昭社長)との見方を変えていない。

 だがピックアップトラックやSUVなどライトトラック系を生産するインディアナ工場とテキサス工場で減産に入ることを決めた。規模と時期は明らかにしていない。

 ホンダもライトトラック系の生産調整に乗り出した。アラバマ工場にカナダ工場からピックアップトラック「リッジライン」を移管。アラバマではミニバン「オデッセイ」SUV「パイロット」と3車種を生産することになる。日産も主にライトトラックを生産するキャントン工場の操業率の低さが懸案になっている。

 ガソリンが1ガロン3ドル以上と依然高値が続く状況で、売れ筋は「カムリ」「アコード」「アルティマ」「カローラ」「シビック」といった乗用車。乗用車に比べ燃費の悪いライトトラックの販売は落ち込んでいる。

■「現地収穫」に励もうという矢先に生産調整

 ところが日本車メーカーは1990年代後半から2000年代前半にかけて利益率が高いライトトラック系の現地生産に相次いで乗り出しており、収穫に励もうという矢先。せっかく新設した工場がフル活用できないジレンマに陥っているのだ。トヨタのインディアナとテキサス、ホンダのアラバマ、日産のキャントンといった新しい工場は投資を回収するためにどんどんライトトラックを生産したいところだが能力を発揮する場面にない。

 乗用車の需要増には日本の工場から輸出すれば事足りる。しかし1ドル100円を切る円高ドル安では喜んで輸出するほど採算は甘くない。

 中国、ロシア、インドなどの新興国は急激なモータリゼーションを迎えており、すでに日本車メーカーに恩恵を与え、あるいは非常に楽しみな存在になっている。しかし、米国ほどメーカーの活動の基盤が揃い、自由に事業が展開できる大市場はない。しかも、先進国で唯一、人口が伸びている国でもある。米国市場の不振がどの程度の期間続くかは日本車メーカーの経営に与える影響が大きい。新興国はまだ発展途上で政治的なリスクもあり、国内市場の回復も望めない。結局は4番打者を米国に任せる状況に変わりはないからだ。

 米国ではトヨタとホンダが需要好調時に立案した新工場を立ち上げる。トヨタのカナダ第2工場とホンダのインディアナ工場は今秋、トヨタのミシシッピ工場は2010年頃の操業開始を予定している。

 カナダ第2の「RAV4」インディアナの「シビック」はいずれも販売好調ではある。ただ、既存工場で生産調整をしながらの立ち上げという、想定しなかった事態ではある。この局面をいかに乗り切るかが、今年度のトヨタとホンダの米国事業の注目点になる。


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