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2008年04月01日(火) 15時45分

春“乱”まん ガソリン値下げ 安売り合戦、GSに給油の列 消費者「また戻る」産経新聞

 道路特定財源の暫定税率の期限が切れた1日、ガソリンの価格が近畿各地でも続々と下がり、「待ってました」と喜ぶドライバーが列をつくった。一方、赤字覚悟の値下げに踏み切ったガソリンスタンドは「経営は苦しいのに…」と困惑が広がった。“値上げの春”に訪れたつかの間の値下げ。ただ、消費者からは「どうせまた上がるのだから…」と冷めた声も聞かれた。

 ≪普段の5倍給油≫

 大阪市西成区の幹線道路沿いにある24時間営業の「大洋油業」ではこの日午前2時ごろから、レギュラーガソリン1リットルを20円値下げして「128円」で販売。客の買い控えで前日は通常の半分ほどの売り上げだったが、値下げ直後から次々とドライバーが入り始め、午前6時ごろからは、1時間あたりの給油量が普段の約5倍になったという。

 同店では日付が変わった直後に税率の安いガソリンを積んだタンクローリーを入れる作戦で値下げを実行したが、徹夜で対応したという保高眞店長(57)は「夜中に在庫が切れたら一時閉店しなければならなくなったところ。たまたまうまくいきました」と笑顔。しかし今後再び値上げが予想されることについては「買いだめ客でもっと混乱すると思うと怖い」と表情を曇らせた。

 大阪府泉佐野市の「丸新石油」でも1リットル「118円」に値下げ。午前7時10分の開店と同時に約20台が列をつくった。梶原一成所長(35)は「タンクが底をついたら本日の営業は終わらざるを得ない。こんなことは初めて」と話した。

 ≪「やむを得ない」≫

 一方、「124円」に値下げした大津市浜大津のスタンドでも出勤時間帯の売上量は平日の約3倍。通常はまったくない問い合わせの電話も13件あった。ただ、他店の値下げを気にした本社の指示でもあったため、所長は「対抗上、やむを得ない。現在販売している分は暫定税率が課せられた価格で仕入れた在庫でもあり、これ以上の値下げは厳しい」。

 また、値下げを見送った奈良市の板倉石油でも「在庫があっても、他店が下げ出したら早めの値下げもやむを得ない」と話す。

 同じく値下げを見送った大阪市西成区の大手石油会社系スタンドでも「値下げは在庫がなくなってからで、早くても4日後」といい、店長は「他店がみんな安くなれば、うちも赤字覚悟で下げざるを得ない。政府には全国一斉に値下げできる仕組みを作ってほしかった」と話した。

 ≪異例の事態≫

 消費者からの口コミ情報によるインターネットのガソリン価格サイト「gogo・gs」にはこの日朝からアクセスが集中し、接続が困難な状態。大阪府内のサイト上で最も安かったのは堺市内のスタンドで1リットルあたり「120円」だったが、こうした激安店を訪れた会社員(30)は「今月下旬になれば、また元に戻ると聞いている。結局はたばこ代ぐらいが浮くだけ」と冷ややかだ。

 一方、安売り販売をめぐっては、独占禁止法に抵触する恐れも浮上している。出庫時点で課税されたガソリンに税金分を上乗せせずに販売することは、仕入れ値を下回る価格で販売する「不当廉売」にあたる可能性があるからだ。

 ただ、公正取引委員会関係者は「異例の事態」としながらも、「不当廉売にあたるのは、力のある業者がほかの業者を駆逐する目的で原価割れ販売を続けるケースなどになる」と独禁法の趣旨を説明。今回は税金部分にあたることから「値下げに正当な理由がないとまではいえず、見解は分かれるのではないか」と話している。

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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080401-00000115-san-soci