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2008年03月31日(月) 00時25分

米、金融行政を抜本改革へ FRBの監視機能を強化朝日新聞

 米財務省は31日、金融行政の抜本改革案を発表する。米国の低所得者向け(サブプライム)住宅ローン危機の深刻化を受け、連邦準備制度理事会(FRB)の監視・監督機能を大幅に強化し、金融不安による破綻(はたん)の連鎖を回避する対応力を強める。米メディアが伝えた。

 中央銀行のFRBは、銀行大手の持ち株会社などを監督することで、金融システム全体を把握してきた。一方、証券や商品投資業界などは証券取引委員会(SEC)などが監督。しかし、90年代以降の急速な金融手法の発達とともに銀行と証券以外にもヘッジファンド、投資会社などの活動が拡大。FRBによる銀行を軸にした金融システム監督・監視にも「限界」が指摘されていた。

 今回の改革案では、金融不安の際にFRBが証券やファンドなど、金融業務を営むすべての会社を直接、徹底調査できるようにする。市場動向をいち早く把握し、取引規制など予防策の実施を可能にさせる狙い。

 特にサブプライム危機では、住宅ローン債権を組み込んだMBSという証券などがローン業界、ファンド、証券、銀行などで幅広く取引され、不良債権化で信用不安と連鎖破綻の懸念が急拡大した。業容をまたぐ新商品の登場は今後も必至で、規制当局の対応力を増す必要性が高まっている。

 監視を強めることで、銀行以外に救済資金を供給する機動力も増す狙い。大手ベアー・スターンズの救済では、大恐慌以来初めて証券業界に特別融資を実施。しかし、間際になって融資判断を支える財務内容の精査をするため、窓口のニューヨーク地区連銀がSECなどから協力を得る必要があった。

 金融行政の効率化では、重複する五つの監督機関を再編する。大手銀行や地方銀行、信用組合、中小貯蓄貸付組合(S&L)など規模や業態などで監督機関が複雑にまたがっているので、リストラして横断的な金融監督庁(PFR)を新たに発足。貯蓄金融機関監督局(OTS)などを廃止する見通しだ。金融実態の複雑化に追いつけるように監督側を一体化させ、1930年代以来という機構改革をめざす。

 さらに、サブプライム問題の再発防止策として、州政府が監督する住宅ローン業界を監視する連邦委員会も創設。ローン会社は州政府ごとに規制内容が異なり、ローン焦げ付きの原因となった不良融資の背景になった。連邦レベルの取り組みを強め、横断的な規制の網をかける狙いだ。

 また、SECは商品先物取引委員会(CFTC)を吸収し、先物市場の監視を強める。保険業界の監督も州から連邦レベルへの移行を検討する。一連の対策は昨年から検討してきたが、法改正に向け議会調整を本格化させる。 アサヒ・コムトップへ

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