記事登録
2008年03月31日(月) 00時00分

携帯規格統一 サービス競争激化へ読売新聞

 KDDI(au)が次世代携帯電話サービスで、通信方式(規格)をNTTドコモなどの方式に統一する方向となった背景には、各社が独自技術で発展してきた携帯電話市場の仕組みが限界を迎えつつある状況がある。

 一方で利用者はニーズに合った端末や携帯電話会社を自由に選ぶことができるようになり、国内の携帯電話市場の活性化につながることも期待される。(山本貴徳、河野越男)

 国内の携帯電話市場は、ドコモのインターネット接続サービス「iモード」やauの音楽配信サービス「着うた」など、各社が独自のサービスで利用者を囲い込む形で急速に拡大した。端末開発の主導権を携帯電話会社が握る仕組みは、市場が成長を続けている間はうまく機能していた。

 しかし、昨年12月末には携帯端末の台数は1億台を超え、「国民1人1台時代」を迎えている。市場は飽和状態に近付いており、メーカーが携帯電話会社ごとに独自の高機能端末を生産することはコストに見合わなくなっている。最近では、三菱電機や三洋電機など、事業撤退・再編の動きが相次いでいる。

 こうした中で、これまで独自の通信方式を採用していたKDDIも、次世代サービスでも独自方式に固執すれば、基地局の整備やメーカー側の端末の開発費用が他社よりも膨らむとの危機感を強めている。

 すでにドコモは2010年までに、端末の基本ソフトを海外の端末に流用できるようにして、端末メーカーの負担を軽減する方針を固めている。端末メーカーにとっては、「国境の壁」は崩れつつある。

 今回明らかになった通信方式の統一に加えて、総務省が電話番号を特定するICカード(SIMカード)の他社利用制限を撤廃すれば、すべての端末が互換性を持つようになり、「携帯電話会社ごとの壁」も崩れる。メーカーは携帯電話会社ごとに設計を変える必要がなくなり、投資負担が軽減されて海外進出の余力も生まれる。ただ、世界の携帯端末市場は、フィンランドのノキアと韓国・サムスン電子、米モトローラの3社で6割以上を占めている。こうした巨大メーカーも日本に参入しやすくなる。世界市場を対象に大量生産している安価な端末が人気を集める可能性もあり、国内市場での競争もさらに激化しそうだ。

 利用者のメリットは大きい。端末を変えずに携帯電話会社を自由に選べるほか、「ビジネス用と私用」「家族用と友人用」などと、一つの回線で複数の端末を使い分けることも可能になる。各メーカーが競って機能面・価格面で幅広い商品を投入すれば、端末も含めた選択の幅は飛躍的に広がりそうだ。

 一方、携帯電話会社側にとっては、利用者の「選別」の目が厳しくなることを意味する。魅力的なサービスや料金プランを打ち出せない会社は、利用者からも見放される。「ケータイ先進国」の技術を生かしたさらなる新サービスの充実が求められることになる。

http://www.yomiuri.co.jp/net/feature/20080331nt0c.htm