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2008年03月31日(月) 00時00分

鈴香被告と母読売新聞

精神的つながり強く
公判が始まる直前の秋田地裁1号法廷。鈴香被告の母は、中央の証言台の前に座り、右側の長いすに座る被告に視線を送った

 昨年12月3日の第10回公判に出廷した畠山鈴香被告(35)の母は、藤井俊郎裁判長から「逮捕から1年6か月、言葉を交わしてないとのことだが、(被告に)面会したら何と声をかけたいか?」と質問され、こう述べた。「ばかなことをしたねって……。たぶん、ほんとにばかなことをしたね」

 母は、証言台の右わきに座る鈴香被告を見ながら優しい声で、「ばかなことをしたね」と2度繰り返した。

 この前に行われた弁護士の尋問には、「(仮に社会復帰したら)抱きしめてやろうと思う」と話し、こう語った。

 「鈴香も彩香も大事な“娘”。下の娘は待っても帰って来ないが、もしかしたら上の娘は私の元に帰ってくるかもしれない。それが私の現実です」

     ◎

 鈴香被告は父、母、弟の4人家族で育った。鈴香被告が幼いころ、父の暴力からかばってくれたのが母だった。

 父は運送会社を経営していたが、一家を知る女性は「父親の病気で仕事ができず、生活が困窮したことがあり、母が金を借りに来たこともある。鈴香たちはそうした母の苦労を見ながら育ってきた」と話す。また、別の知人男性によると、母は家計を助けるため、たこ焼き屋で仕事をしたこともあったという。

 鈴香被告は、能代市の海水浴場で知り合った元夫と、栃木県の川治温泉へ半ば駆け落ちをした。その時も、鈴香被告は、母には電話で伝えていた。母は電話口で怒ることなく、「誰も怒ってないから、早く帰って来なさい」と言ったという。鈴香被告は公判でそう打ち明けている。

 事件後、鈴香被告の両親は離婚した。被告の父について、母は「まるで他人のように、『鈴香が彩香をあやめたら絶対に許せない』と言った。そういう言葉が許せなかった」と述べた。

 親類によると、彩香ちゃんに対する殺人容疑で鈴香被告が再逮捕されたころ、母はかなり衰弱し、歩くのもやっとの状態だったという。

 母は第10回公判で、検察官から「もしかしたら(鈴香被告が彩香ちゃんを)殺したかもしれないと考えたことはないか」と尋ねられ、「ないです。絶対にしていないと信じています」とはっきりとした口調で答えた。「励ましてやりたい」とも述べ、強い母心を示した。

 しかし、鈴香被告が「極刑にしてほしい」と言ったことについては、怒気を込めてこう非難した。

 「死んでしまえば楽。でもこれから先、生きていくのは死んでしまうよりつらい。そのつらさから逃げようとしているのが腹立たしいです」

     ◎

 畠山被告の起訴前に秋田地検が依頼した簡易精神鑑定では、「実母への依存関係が強い」と分析された。

 また、秋田地裁の依頼で、鈴香被告を精神鑑定した生協さくら病院(青森市)の精神科医、西脇巽氏は公判で、鈴香被告の人格を「依存性人格障害」としたうえで、鈴香被告と母の関係については、こう指摘した。

 「精神的にへその緒が切れていない。母親は被告を自分で独占し、自分と一体化したい、あるいは支配下に置く気持ちが強い。30歳を過ぎているのに親離れ、子離れができていない」

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/akita/feature/akita1206076020175_02/news/20080331-OYT8T00064.htm