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2008年03月31日(月) 21時44分

日中合作の記録映画「靖国」、相次ぎ上映中止に読売新聞

 靖国神社をテーマにした日中合作のドキュメンタリー映画「靖国 YASUKUNI」が、東京と大阪の映画館5館で上映中止となったと、映画を配給するナインエンタテインメント社が31日発表した。

 中止を決めたのは東京都内の銀座シネパトス、渋谷Q—AXシネマ、新宿バルト9、シネマート六本木の4館と大阪府内のシネマート心斎橋。いずれも今月12日から公開を予定していた。「公開によって、近隣の劇場や商業施設などに迷惑が及ぶ可能性がある」(銀座シネパトス)などと理由を説明している。

 この映画は文化庁所管の芸術文化振興基金750万円の助成を受けており、「政治的な宣伝意図があるのではないか」などとして、国会議員から問題視する声もあった。「映画を見たい」という議員の要請もあって配給会社は3月12日、都内で試写会を開き、議員約40人が参加。議員と文化庁関係者らの意見交換会が開かれ、参院文教科学委員会でも質疑が行われた。

 19日に新宿バルト9が公開中止を決定。その後、他の映画館や配給会社に上映中止を求める電話などがあったという。

 19年間日本に住む中国人の李纓(りいん)監督が、10年間にわたって、靖国神社を訪れる参拝者や遺族、神社に納める刀を作る刀匠らの姿などを記録した日中合作映画。昨年の釜山国際映画祭など海外の映画祭でも上映され、今年3月の香港国際映画祭では最優秀ドキュメンタリー賞を受賞した。

 配給会社では「国際的な評価も高い作品が、こうした事態に陥ったのは大変遺憾。日本社会における言論の自由、表現の自由への危機を感じる」とコメントを発表。文化庁芸術文化課では「一般論として、芸術文化の発展の機会が外部からの嫌がらせで妨げられてはならない」と話している。

 最初に助成を問題視し、試写会に参加した自民党の稲田朋美・衆院議員は「我々が問題にしたのは助成の妥当性であり、映画の上映の是非を問題にしたことは一度もない。いかなる内容の映画であれ、それを政治家が批判し、上映をやめさせるようなことが許されてはならない」などとする談話を出した。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080331-OYT1T00594.htm