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2008年03月28日(金) 15時55分

ボリビアで広がる「リンチ合法化」の波紋COURRiER Japon + hitomedia

鞭打ちに、火あぶり──そんなぞっとするような体罰がボリビアで復活しようとしている。同国の先住民大統領エボ・モラレスは、体罰を合法化しようとしているのだ。
昨年12月、ボリビアの制憲議会でモラレスが推進する憲法草案が可決された。この草案に盛り込まれた条項の一つに、先住民社会などで伝統的に行われてきた刑罰を認めるという規定がある。刑罰には、たんに土下座して謝らせるものから、鞭打ち、強制労働、村からの締め出し、リンチまでさまざまなものがある。
先住民が多いボリビアの農村部では、いまでもコロンブス到達以前の伝統や風習を受け継いでいる村も多い。体罰もこうした伝統の一つで、窃盗や傷害、姦通、殺人などを犯した犯罪者は、町の広場で長老たちによって裁かれる。昨年11月には西部の都市エル・アルトで、泥棒2人が住民によって生きたまま火あぶりの刑に処されるという事件もあった。
今回の憲法草案の争点となっているのは、国家の司法制度と地域社会の法の共存を認めるかどうかという問題だ。共存を支持する者は、長老たちの下した裁きは国の裁判所によって覆されるべきではないと考える。
これに対して、サンパウロ大学のパウロ・カステーラ教授(国際法)は、「(地域社会の掟を合法化することで)モラレスは法の支配を形骸化しようとしている」と懸念を表明する。
こうした地域社会の法が支持される理由には、先住民のあいだで警察や裁判官などへの不信が強いことがある。手続きが煩雑で、不正が行われやすい国家の司法制度と比較して、地域社会による“裁判”は費用がかからず、迅速で、また住民自身が参加できる。白人主体の腐敗した裁判で、先住民が一方的に差別されるという心配も少ない。
憲法草案は国民投票(日程は未定)を経て成立する。ボリビア国民がどのような“判決”を下すのか、注目だ。

ヴェジャ(ブラジル)ほか。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080328-00000000-cou-int