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2008年03月28日(金) 00時00分

鈴香被告の元恋人読売新聞

一変、検察寄り証言
元恋人は、鈴香被告が彩香ちゃんと暮らす朝日ヶ丘団地の町営住宅をよく訪れた。住宅は1月に解体された(1月10日撮影、藤里町粕毛で)

 <多くの人が私の極刑を望んでいるのも知っています。でも弟と母さんが待っていてくれる。好きな人もいます。死んでしまいたい自分と生きていたい自分。どちらも本当の自分だと思っています。たった3人のためだけに生きていたい。間違っていてもそう思います。帰りたい。少しでも早く帰りたい>

 畠山鈴香被告(35)は公判中、日記にそう書いている。記述の日付は、藤里町の朝日ヶ丘団地の近隣住民らが第2回公判で次々と被告の育児放棄ぶりを非難した昨年9月21日の第2回公判から間もない9月25日。追い詰められた鈴香被告が生きるよりどころとして「たった3人」に挙げた母、弟のほかのもう1人が、元恋人だった。

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 鈴香被告は1997年6月に元夫と離婚した後、彩香ちゃんを実家に預けて働くようになった。だが、仕事は長続きせず、保険外交員や釣具屋店員などいくつもの職を転々とした。

 99年12月、パチンコ店で働き始めた鈴香被告は、同僚の男性と出会う。その男性が元恋人だった。店では従業員同士の恋愛を禁じられていたが、鈴香被告は翌2000年から逮捕されるまでの6年半、この7歳年下の元恋人と交際した。

 鈴香被告は、元恋人が運転する乗用車で、彩香ちゃんを連れて、男鹿市の水族館などへよくドライブに出かけた。被告は助手席、彩香ちゃんは後部座というのが“指定席”。そのときの様子を被告は昨年10月29日の第5回公判でこう話した。「彩香はとても喜んでいた。『お兄さんの車に付いているテレビ見ていい?』『車広いね』と言っていた」

 鈴香被告は親類にも、「彩香が『お母さんがお兄さんと結婚すれば、弟か妹ができるかな』と言うんだ」「元恋人は『おれの子は彩香だけだ』とかわいがってくれる」と語っていたという。

 元夫から「気性が荒い」と言われた鈴香被告は、元恋人に対しても怒りっぽく、機嫌が悪いとどなり散らし、公判では反省の弁も述べている。「そういう自分は嫌でした。直そうと努力したがうまくいかず、元恋人に対していつも意地悪なことを言った。きついことを言ってゴメンねと話したことがある。(元恋人は)自分で分かっているならいいよと言っていた」

 鈴香被告の逮捕後、元恋人は、能代署二ツ井交番で事情聴取を受け、「鈴香は彩香ちゃんを憎んでいる様子はなかった」と話し、被告をかばった。さらに、弁護士を通じて「頑張れ」と励ました。

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 しかし、昨年10月1日の第3回公判に検察側証人として出廷した元恋人は、態度を一変させた。

 「鈴香が『彩香がいなければ就職しやすい』『実家に養子に出して、栃木でも東京でも県外で働きたい』と言うのを何回も聞いた。彩香ちゃんが部屋に入ってくると、『しっ、しっ。あっちに行ってなさい』と、邪険にしていた」

 「彩香ちゃんの誕生日に実家に行くときは彩香ちゃんの格好はきれいで、彩香ちゃんの手を握ったり抱っこしたりしていた。鈴香は外面がいいんだと思った」 そう証言した元恋人は、鈴香被告について、「金に汚く、身勝手で、04年ごろから別れようと考えていた」と話し、05年1月には、財布の中からキャッシュカードが無くなり、口座から25万円を引き出され、「鈴香に盗まれたのだろう」と述べた。

 元恋人は、鈴香被告が逮捕された当初、かばおうと考えていたが、この公判の1〜2週間前に検察官と4回ほど会い、気が変わったという。

 鈴香被告にとって、“裏切り”と映った元恋人の変化。鈴香被告の心に大きな揺れが生じていく。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/akita/feature/akita1206076020175_02/news/20080327-OYT8T00799.htm