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2008年03月26日(水) 00時00分

⑯炎上広報マンはオタク読売新聞

渋谷駅前で上映されているシブアニ

 「捜査には全面的に協力しますから」。ライブドアに東京地検の捜索が入ったのは2006年1月16日の夕方。広報部長だった伊地知晋一さん(39)は本社のある六本木ヒルズを背に、報道陣に何度も頭を下げた。

 「そのまま、何も触らないで」。係官の怒声がオフィスに響く。社員らはパソコンの前で凍りついたように動けなくなる。ロッカーも机の引き出しもすべてひっくり返され、たくさんの書類が運び出された。

 捜索終了は明け方の6時ごろ。へとへとになって自宅に戻り、パソコンを開いて『やわらか戦車』を見た。ライブドアのサイトで、ネットアニメをやろうと言い出したのは自分自身。そこでデビューしたばかりのほんわかキャラは、たちまち大スターになっていた。

 思わず気がゆるむ。「人気を集めているようでうれしい」。自分のブログに思いを書き込んだが、これが大間違い。直後からブログに苦情の書き込みが殺到した。「会社が大変な時に何いってるんだ」「お前こそ、やわらか戦車みたいに退却しろ」——どれもキツイおしかりの言葉。会社ばかりか、自身のブログまでもが炎上した。

 ライブドア退社後の昨年3月、「ブログ炎上」(アスキー)という本を執筆。炎上の起きるメカニズムや鎮火のコツを体験を交えて論じた。悪意の書き込みが殺到してブログを閉鎖に追い込む「炎上」は、ゆゆしき社会問題になっており、本は売れ続けた。

 そこで、新たについた肩書は「炎上コンサルタント」だ。企業などから講演依頼が次々に舞い込んでいる。「人生なにが幸いするか、わかりませんね」

 今は別のネット事業会社の幹部でもある。現在、力を入れているのが、またしてもアニメ。それがアニヲタの宿命なのか。仕掛けたのはシブアニだ。渋谷駅前のスクランブル交差点。ハチ公前に立ったら、首をやや右に向けて上の方を見てみよう。「おやっ」と思う瞬間があるぞ。

 ■シブアニ■ 公共へのメッセージを込めた創作アニメを、プロアマを問わず募集。渋谷駅前の交差点から見える大型モニターで上映されている。地球温暖化、高齢者への親切運動、食べ物を粗末にするな——など作品のテーマは自由。宣伝映像などに交ざり、1時間に1分のペースで上映されている。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tokyo23/feature/tokyo231203958795871_02/news/20080326-OYT8T00093.htm