記事登録
2008年03月25日(火) 00時00分

⑮ひ弱なアトム登場読売新聞

空を飛ぶやわらかアトム(c)手塚プロダクション/ネトアニ・ラレコ

 へー、鉄腕アトムとやわらか戦車が合体しちゃうんだ〜。昨年10月、オタクの聖地・秋葉原で開かれたイベント「JAM2007」。スクリーン上に『やわらかアトム』が登場すると、会場はどよめきに包まれた。

 元祖・正義の味方と、常に退却を続ける「ゆるキャラ」やわらか戦車のコラボは、水と油と普通は思うけれど……。大福にイチゴ、豆腐に焼き肉のタレ。意外な組み合わせがおいしかったりするものだ。

 ストーリーが進んでいくと、再びざわめきが。今まで地上を退却しかできなかったやわらか戦車が炎を噴き出し、勢いよく空を飛んでいるのだ。アトムの強力な敵プルートゥも登場して、ほんわかした対決劇が展開される。

 手塚プロダクションが、やわらか戦車の作者ラレコさん(36)に「やわらかアトムというのを作ってみない」と声をかけて実現したものだ。ラレコさんはもとは漫画家志望。かの大巨匠と共演できると聞いて頭の芯が震えた。

 制作はラレコさんに委ねられる。「手塚先生への敬意は忘れない。でも、原作の世界観は大胆に打ち壊そう」。こう腹を決めて、2か月ほどで、弱気で逃げ腰のかわいいアトムを作り上げる。現在、第4話までをネットで公開中だ。

 手塚プロダクションの担当者は「やわらかアトムがきっかけになって、元々の作品のファンが増えてくれれば、今後の商品展開にバリエーションが出てきますから」と話す。

 秋葉原の会場では、子供たちが首をかしげつつ、笑った。「何でやわらか戦車に角が生えているの」「アトムってなぁーに……でもかわいい」。アトムが映像の世界に産声を上げてから、もうすぐ半世紀になる。遺伝子は突然変異して、子供たちの心に飛び込んでいくのであった……

 ■JAM2007■ 経済産業省と日本動画協会の主催。アニメキャラの商品開発や2次利用を考えるイベントで、昨年10月、4日間で約1万人を秋葉原に動員。人気キャラが誕生し、キャラクタービジネスに火がつくと、産業界全体の活性化につながる。ミッキーマウスが代表例。2次利用推進は、眠れる資源を掘り起こす狙いがある。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tokyo23/feature/tokyo231203958795871_02/news/20080325-OYT8T00664.htm