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2008年03月19日(水) 00時00分

⑬制作の風景さえ笑いに読売新聞

 初めての長編映画『秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE』の試写会で、蛙(かえる)男(おとこ)さん(36)(本名・小野亮)はいたく緊張した。「ウケるだろうか」。昨年3月のこと。不安が押し寄せ、中に入れない。ロビーにぽつんと座り、コーヒーとたばこでやり過ごした。

 扉が開くと、ワイワイガヤガヤ。お客さんたちの笑顔が躍っている。「やったゾ」。心の中だけで、大げさにガッツポーズした。

ドジな悪の秘密結社「鷹の爪」団の面々(c)「秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE2」製作委員会

 秘密結社「鷹の爪」団は地球征服を狙うも、ドジな悪の組織である。総統はヒトラー風の軍帽とマントに身を包む怪人。鼻の下のちょびひげが怪しい。他のメンバーは島根の農家が実家という「吉田くん」、クマのぬいぐるみにしか見えない「レオナルド博士」などなど。都内のアパートにアジトを構えるが、なぜか家賃を払えなくなり、夜逃げすることに——。ドタバタは続く。

 蛙男さんは、へんてこりんなことが大好きだ。スクリーンの右側には、棒グラフが1本。目盛りが上がったり、下がったりする。これは映画の制作予算を表示したもの。展開とともに予算は減っていくが、ハンバーガーや宅配ピザなど20社以上の商品や広告が作品内に登場するたび、ちょいと上がる。いたずらか、映画界の革命か。蛙男さんは「映画を作る環境そのものを、笑い飛ばしてみたかった」とほくそ笑む。

 この後、『鷹の爪』は全国各地でロードショー公開され、客入りも上々。成功裏に終わる。この2月にはニューヨーク国際インディペンデント映画祭にも出品し、審査結果を待っている。「吉田くん」がビッグネームになる日も近い?

 「やっと東京でご飯が食べていけます」。大成功しても、蛙男さんはホッとするだけだ。ようやく島根県松江市の妻と長男を都内に呼び寄せ、家族水入らずの生活を始めたという。

 次回はネットアニメ界で蛙男さんと双璧(そうへき)をなすラレコさんのご登場。大ヒット作『やわらか戦車』をめぐるお話。弱くてしっぽを巻いて逃げ出す戦車のキャラクターは、なぜ生まれたのか。茨城在住というナゾの監督の素顔に迫ろう。

 『秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE2〜島根は鳥取の左側です(仮)〜』 初夏にTOHOシネマズ系で全国公開される。蛙男商会が送り出す長編アニメ第3弾。怪人の集まる秘密結社「鷹の爪」団がネットの世界や島根県で、ハゲタカファンドと戦う物語。キメゼリフに使うとして、30日まで声優1万人を一般公募。この数でギネス登録を狙っている。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tokyo23/feature/tokyo231203958795871_02/news/20080319-OYT8T00134.htm