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2008年03月19日(水) 00時00分

多重債務、救済策ある お金のために死なないで読売新聞

調停、清算の体験つづる 住宅ローンきっかけの女性

「多重債務は必ず解決できる」と話す弘中さん(神戸市内で)

 「多重債務による自死をなくす会」(事務局・神戸市)代表幹事の弘中照美さん(47)が、自らの借金の体験をつづった「お金のために死なないで〜多重債務による自死をなくす」=写真=を岩波書店から出版した。「借金を抱えていることを誰にも打ち明けられず、苦しんでいる人々を救いたい」と話している。


 全国に約240万人いるとされる多重債務者。「なくす会」のホットラインに助けを求めてくる人の話に、弘中さんは静かに耳を傾ける。

 「『頑張れ、しっかりしろ』なんて言わない。十分に頑張ってきたのですから」

 弘中さんも多重債務者だった。1991年、マイホーム購入のために組んだ月々36万円の住宅ローン。バブル崩壊後、夫の収入が減って返済できなくなり、借金を返すための借金を繰り返した。

 「お金のために死なないで」の第1部では、こうした体験を書いた。99年12月、消費者金融会社に「調停を申し立てるので時間がほしい」と電話した時、「家に行ってやるからな」と脅された。当時、中学2年生だった二男を連れてクリスマス・イブの街をさまよった。「死にたい。楽になりたい。消えてしまいたい」とさえ思った。

 同月末、大阪簡易裁判所の調停で消費者金融会社と話し合い、債務を計画的に清算することになった。その後、離婚し、息子2人を連れて新生活を始めた2004年8月、離れて暮らしていた実母が自殺した。母も、弘中さんが知らないうちに借金を抱えていた。母を救えなかった自責の念は今も消えない。

 「母は、一人で苦しんでいた。私が話を聞いてあげたら助けることができたかも知れない」。そんな気持ちから昨年3月、「なくす会」をつくった。

 第2部では、「なくす会」の活動を中心に、多重債務による自殺をなくすための方策について語っている。

 警察庁の統計では、2006年の自殺者は全国で3万2155人。9年連続で3万人を超えている。このうち、多重債務など経済苦が原因とみられる自殺者が約8000人と全体の4分の1を占める。

 「債務清算のための救済策があることを知ってほしい。必ず解決できる。お金のために死ぬ必要はない」と弘中さんは強調する。

 本の表紙は、母の好きだったコスモスのイラストを、美大に通う二男が描いた。末尾には「なくす会」のホットライン(080・6159・4730、080・6159・4733、080・6159・4741=午前9時〜午後8時)や、「特定調停」「任意整理」「個人再生手続き」「自己破産」の4通りの解決方法を解説するQ&Aも掲載している。208ページ。1500円(税別)。

http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/kyousei_news/20080319-OYT8T00246.htm