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2008年03月19日(水) 14時27分

食の安全に警鐘 田中社長に懲役4年 ミートホープ判決朝日新聞

 白い恋人、赤福、船場吉兆……。昨年来、ドミノ倒しのように露見した食の偽装。発端となったのが、ミートホープの偽装牛ミンチ事件だった。食の安全にかつてない関心が寄せられる中、社長の田中稔被告(69)に言い渡されたのは「懲役4年」の実刑判決だった。

 事件は07年6月、朝日新聞が特報して発覚した。田中社長は法廷で謝罪を口にしたが、一方で「安い肉を求める取引先業者にも原因があった」「経験を生かし、将来は食の不正を摘発する『食品Gメン』になりたい」とも発言した。

 田中社長に対し、札幌地検が求めた刑は「懲役6年」。「実刑で罪を償うしかない」というメッセージを込め、裁判所に執行猶予付きの判決を出させないように思案した末のことだった。

 ミートホープのミンチ肉は、事件発覚前の1年間だけでも7000トン近い食品に加工され、全国の消費者が口にしていた。今回の事件で検察は、この事実を重くみた。法的には直接の被害者は取引先の食品企業だが、真の被害者はその先にある全国の消費者だ、という考えだ。「一罰百戒」の狙いも込めた。

 「司直の判断は時代に応じて変化する。今の社会では、絶対に許されない犯罪だった」。検察幹部の一人は、こう話した。

 一連の偽装を内部告発した元常務の赤羽喜六さん(72)は、この日の判決を傍聴した。「程度の差こそあれ、私も不正に加担したと言える。消費者に大きな迷惑をかけてしまった。今日、自分も同様に罰せられたのだと思っています」。そして、こう語った。「正しいことをしたという思いが半分、そして後悔が半分。同僚を路頭に迷わせてしまった……。告発が必要のない社会になってほしい」 アサヒ・コムトップへ

http://www.asahi.com/national/update/0319/TKY200803190189.html