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2008年03月18日(火) 00時00分

⑫自主制作ネットで人気読売新聞

古墳ギャルのコフィーちゃん(左)(C)「秘密結社鷹の爪THEMOVIE2」製作委員会

 蛙男(かえるおとこ)。インターネットの世界では、この名で通っている。ネットアニメ『古墳GALのコフィー』の作者、小野亮さん(36)は6年前、東京から島根に移り住み、かわいらしい顔の古墳たちが学園生活を送る物語を生み出した。

 かつては映画監督を目指して、都内で映像産業の片隅にいた。弁当を手配したり、ロケ地で近所にあいさつしたりが主な仕事だった。が、このままでは夢はかなわないと、島根県出雲市に引っ越し、再出発を期す。収入ほぼゼロからのスタート。ネットアニメの制作に取りかかったのは、4年前のことで、アニメ制作ソフト「フラッシュ」の勉強と絵を作るところから始めた。

 ある日、クラスメートの古墳がピンチに。「マンション建てちゃうぞ」。悪徳不動産屋が不気味な声色で脅す。「助けて〜」と甲高い悲鳴を上げると、古墳の友だちが次々に集まってくる……。これは物語の一コマだが、声優もほとんど自前。裏声を出したりするのがとても恥ずかしく、妻や近所に聞かれないよう、布団をかぶってマイクに吹き込んだ。

 道が開けたのは、『古墳〜』発表(2005年5月)の約1年前のこと。第1作『菅井君と家族石』をネット上に発表したところ、アクセス数が4万に上るなど評判に。これは出雲に住む貧乏な音楽好きの黒人一家の話。ナンセンスな笑いが共感を呼び、企業からCMアニメの発注が次々に舞い込む。収入もみるみる増えた。

 『古墳〜』は06年にテレビ朝日系で放映され、このころ、「蛙男商会」という会社も設立。なんだか、仮面ライダーに出てきそうな悪の組織のような名前だ。

 アニメ産業の集積地、東京に戻ったころには、すっかり人気者になっていた。昨年3月、『秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE 〜総統は二度死ぬ〜』が全国劇場公開。その制作を発表した六本木ヒルズの映画館にはファン数百人が詰めかけ、「フロッグマ〜ン」の声で迎えられる。

 「夢のようだ」。元弁当係は心でそうつぶやきながら、まばゆいフラッシュと拍手の中に踏み込んでいった。

 ■フラッシュ■ アニメを作るパソコンソフト。これが普及した2001年ごろから、一般の人の個人作品の発表が盛んに。蛙男監督もインターネット上で、軽快な音楽に乗って猫男が宙を舞う『CATMAN』などの作品を見て創作を始めたという。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tokyo23/feature/tokyo231203958795871_02/news/20080318-OYT8T00178.htm