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2008年03月18日(火) 20時11分

<踏み字>鹿児島県警元警部補に有罪判決 福岡地裁毎日新聞

 被告12人全員の無罪が確定した鹿児島県議選違反事件に絡み、任意聴取中に家族の名前を書いた紙を踏ませたとして特別公務員暴行陵虐罪に問われた元鹿児島県警警部補、浜田隆広被告(45)に対し福岡地裁は18日、懲役10月、執行猶予3年(求刑・懲役10月)を言い渡した。林秀文裁判長は踏み字を陵辱・加虐行為と認定し「取り調べの手段・方法として常軌を逸して違法」と指摘した。

 林裁判長は踏み字行為の回数を検討。「10回程度」とする被害者の川畑幸夫さん(62)=同県志布志市=の主張を「自ら署名・指印した警察官調書が存在するのに記憶すらないと証言するなど客観的事実と整合せず、事実の誇張もうかがわれる」と信用性を否定した。一方で「1回だけ」とする浜田被告の供述も「信用性に疑問が残る」と指摘。「少なくとも1回踏ませたことは証拠上明らかだが、それ以上の認定は困難」として「1回」と認定した。

 そのうえで「川畑さんが大きな屈辱感を味わわされ、精神的苦痛を受けたことが容易に推測できる。1回でも踏ませることは、精神的苦痛を与えるに十分」と同罪成立を認定。「黙秘権は容疑者にとって基本的で重要なもので、黙秘状況を打開するためだとしても、人権に配慮すべき取調官としてあるまじき行為。説得行為としての許容範囲を大きく逸脱し違法」と述べた。

 判決によると、浜田被告は県警捜査2課に勤務していた03年4月16日、志布志署取調室で川畑さんへの任意聴取中「お前をこんな人間に育てた覚えはない」などと父親や孫のメッセージに見立てて書いた紙3枚を、両足首をつかんで1回踏ませた。

 川畑さんは公選法違反容疑で逮捕されたが処分保留で釈放され、不起訴となった。事件を巡っては、川畑さんが04年に「精神的苦痛を受けた」として県を相手に民事提訴。鹿児島地裁は08年1月、県に60万円の支払いを命じ、判決が確定した。浜田被告は07年8月に県警を辞職。民事判決を受けた県の求償に応じ、50万円を支払っている。県の規則で、有罪が確定すれば退職金は支払われない。【石川淳一】

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080318-00000118-mai-soci