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2008年03月17日(月) 03時06分

新銀行東京、知事提唱の芸術事業から絵画購入…05年秋読売新聞

 東京都が設立した新銀行東京(千代田区)が2005年秋、石原慎太郎知事が提唱した文化振興事業の「トーキョーワンダーサイト(TWS)」を通じて、3枚の絵画を計約52万円で購入していたことが16日、読売新聞の調べでわかった。

 知事本人が銀行に購入を持ち掛けていた。TWSの事業責任者は知事の四男の友人で、新銀行が美術作品を購入したのはこのケースだけだった。購入時は、すでに不良債権が発生し始めており、石原知事と新銀行との関係が改めて問われることになりそうだ。

 都や新銀行などによると、石原知事は新銀行の開業直前の05年3月ごろ、本店を視察で訪れた際、「殺風景だから、ワンダーサイトで発表している作家の作品を飾ったらどうか」などと提案した。

 これを受け、新銀行は営業や資金担当などの担当者による絵画選定委員会を設けて購入を検討。同年11月ごろ、TWS側から持ち込まれた若手画家4人の作品計5点の中から、2人の絵画計3点を計51万6000円で購入したという。

 新銀行が絵画を購入した時期は、すでに融資の焦げ付きが始まっており、05年10月から06年3月にかけて、無担保融資などが行われた企業の債務不履行は24億円に上っていた。

 購入した絵画は本店や各店舗の応接室などで約半年ずつ持ち回りで飾られていたが、昨年9月以降、本部の倉庫に梱包(こんぽう)して保管されている。
 TWS事業の事実上のトップの館長は、石原知事の四男の友人で、外部の専門家である都参与に迎えられた今村有策氏。06年11月には、画家の四男が同事業に助言する諮問委員として、公費で海外出張していたことなどが明らかになり、昨年春の都知事選では、石原知事の公私混同などと批判を浴びた。

 新銀行は、多額の不良債権の発生などで、累積赤字が936億円(昨年9月末)に上り、都が経営を支援するとして、400億円を追加出資する予算案を都議会に提出している。

 都は、新銀行の経営難は、甘い融資審査を続けた開業時の旧経営陣の責任と主張しているが、「開業前の都の計画が過大で、経費が膨らんだ」との指摘もある。石原知事は開業当時、新銀行を「我が銀行」と呼んだが、最近の都議会などでは、「都は株主に過ぎない。私がすべて事業を進めたような指摘は全くあたらない」と語っている。

 石原知事側は「TWSで支援している若手芸術家のチャンスを広げる意味もあり、視察の際に購入をアドバイスした。どちらも都が進めた事業で、作品の値段が上がれば銀行にもプラスになる」と話している。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080316-00000042-yom-soci