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2008年03月17日(月) 18時24分

「正論」より「暴論」を好む産経新聞オーマイニュース

 『産経新聞』がおかしい。最近起きた二つの事件「沖縄少女暴行事件」と「イージス艦衝突事件」に関して、極めて異常としか思えぬ「正論」を、評論家に書かせている。

■「親のしつけ」の問題か?

 少女暴行事件は、少女の告訴取り下げで一転した。日本人の奥さんと別居中の米兵は、不起訴処分となって保釈された。強姦は親告罪である。この事件について産経新聞は、まるで少女側に問題があった事件かのような評論を元産経新聞政治部長で評論家の花岡信昭氏に書かせた。

 この評論は、女あさりをやっている米兵のバイクに「無防備」に乗る少女への「親のしつけ」こそが問われるべきだと言わんばかりだ。少女は、事件がこれ以上世間で騒がれることに耐えられなくなって告訴を取り下げたのではないのか。

 花岡氏には、日本にはどのようなことがあっても米軍がいてくれないと困る、ということが前提にあるようだ。沖縄の自治体やマスコミが事件を責め立てるのは、反米・反基地運動に手を貸すものだというのである。これが「正論」だというのだろうか。

 米軍の駐留そのものが問われるべきである。過去、ジラード事件(1957年に群馬県の米軍演習場で、薬莢を拾っていた日本人主婦に米兵が小銃を発砲、死亡させた事件。裁判権をめぐって日米の争いとなった)以来、米軍はまるで日本を格下の属国と見なしているかのように様々な事件を起こしている。こうした不平等な関係こそ問われてしかるべきなのである。

■漁船側に瑕疵?

 イージス艦衝突事件についても、月刊「WiLL」編集長の花田紀凱氏(元週刊文春編集長)が、この場合は漁船が避けるべき事件だと書いている(当該記事)。巨大なイージス艦など融通が利かないから、小さな漁船がこうした場合は避けるべきで、これが常識、漁師の鉄則だというのである。

 海上のルールでは、漁船を右に見たイージス艦側に回避義務がある。漁船は仲間の証言などで衝突回避の行動をとったことが分かっているが、イージス艦は直前まで自動操舵だった。その上、判断ミスも重ねている。艦長は混雑する日本近海に来たのに、寝ていたし自動操舵も知らなかったのである。それでも衝突に関して漁船に瑕疵があるのか? それより何より、事件後に取った防衛省の報告や調査内容も、二転三転する様子は明らかに責任をどこまで逃れらるかを模索した結果の行動ではないのか?

 この事件は、いまだに行方不明者が2人いる。万が一にも花田氏の主張が「常識」だとしても、加害者意識はどこにもなくなってしまう。国民を守る気概は何処に行ったのか。「そこどけそこどけ、兵隊さんのお通りだい」。そんな軍隊優先思想が防衛省内に今も残っているのではないか。

■暴論を掲載する無神経

 産経新聞が取り上げた2人の「正論」や「常識」。彼らには「国防」が概念としては存在しているものの、国民や人の命への視点は持ち合わせていない。

 行政改革で多くの省庁が人員削減を受けている。福祉や教育予算なら大いに論議されるところであるが、軍事予算は莫大な額を維持している。宇宙空間のミサイルを撃ち落とせると豪語しても、小さな漁船すら確認できない役に立たずのイージス艦をアメリカの言いなりで導入している。

 産経新聞は「正論」ではなく暴論を好むようである。「花」で始まるこの2人の評論を無造作に掲載する神経が、信じられない。

(記者:岡井 健)

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