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2008年03月15日(土) 03時23分

警察庁 取り調べ一部録画へ 新年度試行朝日新聞

 警察庁は14日、取り調べ過程の一部を録音・録画する「可視化」を、08年度中にも全国の主な警察で試行することを決めた。同庁はこれまで、捜査に支障が生じるとして可視化には慎重な姿勢をとり続けてきたが、冤罪事件や無罪判決などを受け、与党側からも迫られる形で方針転換した。ただ、冤罪被害者や日本弁護士連合会は全過程の録音・録画を求めており、評価が分かれそうだ。

 自民、公明の両党は14日、検察が06年から試行している可視化を警察も実施し、結果の検証を求める提言をそれぞれまとめた。自民の会合に出た米田壮・警察庁刑事局長は「提言を重く受け止め、真摯(しんし)に検討してまいりたい」と試行に前向きな姿勢を示した。

 同庁は、裁判員制度の対象となる殺人や強盗致死などの重大事件での試行を想定。捜査責任者が必要と判断した事件について、取り調べ担当の捜査員が、自白調書に沿った質問をして容疑者に答えさせたり、調書内容を読み聞かせて署名させたりする状況を録画するなど、検察の試行と同様な内容になるとみられる。

 一部の可視化では「冤罪を防止する上で制度的な保障にはならない」として、日弁連などが求めている全過程の録音・録画については、警察庁は引き続き、「真相解明を害する恐れがある」と反対している。検察当局も同じ姿勢だ。

 試行について、警察幹部は「自白の任意性を立証するための措置だ。取り調べの適正化は1月に公表した『指針』ではかる」としている。

 冤罪だった富山県警による強姦(ごうかん)事件や無罪となった鹿児島県警の選挙違反事件では、自白の真偽の検討が不十分だったことや長時間にわたる追及的・強圧的な取り調べなどが問題になった。同庁は、取り調べ状況を監視・監督する専門部署の09年度までの新設などを柱とする「適正化指針」をまとめていた。

 また、法務・検察当局も、公明の提言を受け、否認事件など任意性が争われている場合は、原則として裁判員裁判の対象の全事件に録音・録画の対象を広げる方針だ。

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