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2008年03月15日(土) 08時01分

取り調べ 録音・録画 裁判員制にらみ転換 警察庁、任意性の立証資料に産経新聞

 取り調べの録音・録画(可視化)について、警察庁はこれまでの慎重姿勢を転換することになった。平成20年度中の試行に向け時期や対象事件などについて検討を本格化させる。取り調べの可視化は、すでに検察庁が一部で試行しているが、「組織犯罪の取り調べでは信頼関係が前提で、録音・録画はなじまない」など現場の反発も根強く、今後、難しい判断も迫られそうだ。

 「捜査の監視強化が目的ではなく、裁判員制度の法廷で取り調べの任意性立証を分かりやすくするためのもの」。警察庁幹部は、可視化を検討する目的をこう説明する。

 すでに試行されている検察庁でも、導入の目的は、取り調べの監視強化ではない。収録したDVDは編集を一切せず、容疑者名や日付などの必要事項を記載。報告書を添え、庁内で保管される。その後、公判に提出した自白調書の任意性がない、など弁護側から指摘された場合、立証資料として利用している。

 こうした記録の扱い方を警察も踏襲するものとみられるが、全国に最大で60カ所の検察庁に比べ、警察は施設が多い。記録管理を専門とする担当を設ける必要性も生じかねない。

 警察庁は今回、可視化の試行を検討するにあたり、組織犯罪の捜査などは除外する方向だ。

 「暴力団犯罪や麻薬などの組織的密売など、組織犯罪の取り調べでは、容疑者の供述がその後の捜査を大きく左右する。容疑者と取調官の特有の信頼関係が前提で、録音、録画にはなじまない」。ベテラン捜査官は指摘する。

 警察庁は検察の試行状況をにらみ、制度の細部を検討する。ある幹部は「犯罪の解明に支障を来さず、任意性の立証に役立つ制度設計をするのは、かなり難しい作業になる」としている。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080315-00000068-san-soci