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2008年03月10日(月) 10時12分

「やっていないのに犯罪者」の恐怖知ってオーマイニュース

 「ある日突然、警察がやってきて、やっていないのに自供で犯罪者にされてしまった」——。

 冤罪事件に巻き込まれた本人や家族など関係者が、事件の解決をリレートークで訴えるイベントが9日、東京・有楽町の有楽町マリオン前で行われた。鹿児島・志布志事件や北九州・引野口事件など無罪判決が下った、あるいは現在も訴えを続けている10事件の関係者が参加。日曜昼下がりの銀座で、道行く買い物客らに、「冤罪は他人事ではない」と訴えた。

 名張毒ぶどう酒事件の再審を訴える支援者らの主催。

 同事件のほか、3月5日に福岡地裁小倉支部が無罪判決を下したばかりの北九州・引野口事件の被告・片岸みつ子さん、2月25日付で最高裁への上告を棄却された仙台・北陵クリニック事件、守大助被告の母親・祐子さんが、街頭でマイクを握った。

 3年9カ月の拘置所生活の末、無罪判決を勝ち取った片岸みつ子さんは、息子の片岸和彦さんに伴われて登壇。

 「無実が認められたのは、本当に家族や支援者の方々のおかげ」としながらも、検察の控訴期限があと10日残っていることの不安を語り、

 「控訴期限まで、家族みんな、本当に不安な日々を過ごしている。検察と警察は、もう私たちを苦しめないでほしい。そんなことより、兄を殺した本当の半にを見つけ出して、私たちを安心させてほしい」

と訴えた。

 一方、7年にわたる控訴、上告の末、2月末に上告棄却決定が下されたばかりの守大助被告の母親・祐子さんは、

 「息子は、ある日突然警察に逮捕された。取り調べでは『やっていないなら無実の証拠を出せ」と言われたという。いったい、裁判というのはだれのためにあるのか。国民のためではなかったのか」

 「私はこの(上告棄却の)判決を負けだとは思っていない。裁判官が負けて、逃げたのだと思っている」

 と声を詰まらせながら語り、息子の無実証明へ、再審請求への決意を新たにした。

 イベントには、強盗や殺人事件だけでなく、選挙違反や痴漢事件の被害者も参加。

 2003年の鹿児島県議選にからむ公選法違反容疑(2007年に12人全員への無罪判決。ほか1人は公判中死亡のため控訴棄却)で、異例の長期勾留や踏み字など違法な取り調べを受けた川畑幸夫さんは、

 「県議選のあと、ある日突然、警察がやってきて逮捕された。取り調べは朝の8時から夜の11時まで、あらゆる手を使って自白を強要するものだった。自分が否認しても、『あっちの容疑者はお前がやったといっている』などと言われ、何がなんだかわからなくなった。警察も検察も腐りきっている」

と違法な取り調べが行われていることを証言。

 「いままで、えん罪というのはテレビドラマの話だと思っていた。それが、自分たちがその世界に放り込まれ、全国にこういった事件がいくつもあることを知った。自分たちを守ってくれるのは警察ではない。取り調べの可視化しかない」

として、法務省で検討が進められている、取り調べの全面可視化の必要性を声高に訴えた。

 イベントでえん罪を訴えた10事件は以下のとおり。

 名張・毒ぶどう酒事件
 北九州・引野口事件
 仙台・北陵クリニック事件
 鹿児島・志布志事件
 鹿児島・大崎事件
 茨城・布川事件
 東京・東電OL殺人事件
 沖田国賠訴訟
 西武池袋線小林事件
 静岡・御殿場少年事件

(記者:軸丸 靖子)

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