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2008年03月09日(日) 03時05分

中国への遺棄化学兵器処理事業、独占受注の会社が撤退へ読売新聞

 旧日本軍が中国に遺棄した化学兵器の処理事業を、国から独占受注してきた大手コンサルタント会社「パシフィックコンサルタンツインターナショナル」(PCI、東京都多摩市)グループが、事業から撤退することが明らかになった。

 同グループは関連の「遺棄化学兵器処理機構」(港区)に受注させた業務を別会社に委託する取引を繰り返し、その過程の資金流用疑惑で東京地検の捜索を受けていた。同機構は清算される公算が大きい。内閣府は2008年度から、個々の会社に直接発注する方針だが、不透明な取引をチェックできなかった発注者側の責任も改めて問われそうだ。

 遺棄化学兵器処理事業は、中国各地に埋められた化学弾を発掘、無害化するもの。日本政府が費用を全額負担し、1999〜2006年度に計約600億円の国費が投じられた。

 調査が本格化してきた04年度以降は、同機構がいったん内閣府から随意契約ですべての事業を一括受注し、その後、個々の事業を調査会社や発掘会社などに委託してきた。04〜06年度の同機構の受注額は計約231億円にのぼる。

 同機構はこのうち約3割を、随意契約でPCIと大手プラントメーカーの共同企業体に委託。さらに、そこからグループ企業を介在させるなどして、個々の会社に再委託するという複雑な取引も行っていた。この取引の過程で、約1億円の流用疑惑が浮上。東京地検特捜部が昨年10月、PCIや同機構を特別背任容疑で捜索している。

 内閣府は、〈1〉本来は必要のない事業の委託や再委託が行われ、無駄な金が使われている〈2〉PCIグループの介在で最終的な委託先を内閣府が把握できていなかった−−などの問題が指摘されたため、08年度から同機構への一括発注を取りやめることを決定。個々の事業ごとに一般競争入札を実施し、個別の調査会社などに直接発注する方式に改めることにした。

 これを受けて、PCIグループは08年度以降、処理事業から撤退する方針を固めた。PCIグループの持ち株会社は「捜査を受けたこともあり、今後も事業に参加するのは不適切と判断した」と撤退の理由を説明。同機構については「清算する可能性が高い」などとしている。

 処理事業は化学兵器禁止条約に基づき、2012年までに終えることになっている。09年以降は処理施設の建設が予定され、なお数千億円の事業費が必要とされている。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080308-00000059-yom-soci