記事登録
2008年03月07日(金) 01時51分

「合憲」住基、不安のまま 住民側の敗訴確定朝日新聞

 住民基本台帳ネットワークは「合憲」との判断を最高裁が示した。訴えられていた自治体は一安心した様子だが、ネットに参加していない三つの自治体はこのまま離脱を続けるという。情報流出や偽造などのトラブルが続き、住基カードの普及も進まないなか、原告たちはそろって判決への疑問をぶつけた。

 ■被告自治体「ひと安心」 離脱組「方針変えぬ」

 「これで安心して運用できる」。大阪訴訟で被告の立場だった大阪府の吹田市と守口市の担当職員らは、ほっとした表情を浮かべた。

 吹田市の阪口善雄市長は「住基カードを図書館や体育施設、医療機関などで共通利用できるようなサービスを検討したい」と意欲を示した。カードの普及率が2.2%で全国平均の1.5%を上回る守口市は訴訟が続く中、積極的な推進策は控えてきたが、最高裁判決を市のホームページに掲載し、対応が正しかったことをアピールするという。

 一方、東京都の国立市と杉並区、福島県矢祭町の三つの自治体はネットから離脱したままだ。

 「判決文を読んでいないので感想は控えたい」と切り出した国立市の関口博市長は「個人情報が流出している状況では、切断を継続すべきだ」と明言した。「システムエンジニアをしていた経験上、コンピューターシステムがいかに便利で脆弱(ぜいじゃく)かよく分かっている。住基カードの普及率の低さを見ても、危険を上回るだけの利益があるとは思えない」と話す。

 推進側の滝野欣弥・総務事務次官は6日午後の記者会見で「ネットに接続しない自治体は違法状態にある」との見解を改めて表明。不参加の3自治体に早急に住基ネットに接続するよう求めた。

 しかし、福島県矢祭町の古張允(こばり・まこと)町長も「判決がどうあれ、今まで通り接続しない方針だ」と語った。国から訴えられるような事態になっても「考えを変えるつもりはない」という。

 杉並区も「自治体の裁量権や、区民の権利の代弁者といった区の主張に関する判断は含まれていない」とし、離脱を続けるという。一方で、選択制を認めないのは違法だとして国と都に損害賠償を求めた裁判で上告中なので、最終的な判断は上告審の結果を待つとしている。

 ■原告「行政追随の判決」

 敗訴した4訴訟の原告住民らは合同で東京都内で記者会見し、「最高裁は国民の不安に答えていない」「行政に追随しただけの判決」などと批判する声が相次いだ。

 石川訴訟の原告で、金沢市から来た浅野陽子さん(72)は「一審で勝ったときは目の前がパーッと開けた感じがしたが、そんなに甘くなかった」と肩を落とした。千葉訴訟弁護団の武田博孝弁護士も「愛媛県などで情報の流出があったのに、最高裁は書面を読んだのだろうか」と憤った。

 訴訟を支援してきた田島泰彦・上智大教授(憲法、メディア法)も不満を述べた。「この国は監視社会にひた走っている。『自己情報コントロール権』が対抗手段になると思っていたが、判決でけられてしまった」 アサヒ・コムトップへ

http://www.asahi.com/national/update/0307/TKY200803060395.html