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2008年03月07日(金) 00時00分

《座標軸》読売新聞

能代商工会議所、補助金不正問題
不正の経緯を説明する広幡会頭(能代商工会議所で)

 2700万円を超える巨額の補助金不正受給問題で揺れる能代商工会議所。広幡信悦会頭は6日、記者会見で「不正が常態化していた」ことを明らかにし、領収書の偽造が事務方トップの事務局長の指示で行われ、職員のほとんどが偽造にかかわったことを認めた。不正受給した補助金を商議所の運営基金に繰り入れたことも判明。次々に明らかになる不正の実態に、広幡会頭は「うみを出し切りたい」と、不正の原因になった事務局長ポストの外部登用など、再発防止策を打ち出したが、組織腐敗の根は深い。(松本貴裕)

 ■組織ぐるみ

 補助金不正受給の発覚後、同商議所が職員全14人に対して実施した聞き取り調査で驚がくの実態が明らかになった。

 補助金の実績報告書に添付する領収書を偽造したことがある職員数は「十数人」。ほぼ全職員が、不正に関与していたことになる。偽造の指示は元専務理事兼事務局長と現事務局長の2人が出し、補助金を受ける事業の担当職員が偽造と知りながらが実行していたという。

 不正受給した補助金は一般会計に移したうえ、商議所の“貯金”に当たる基金に繰り入れていた。

 広幡会頭は、「事務局みんなで不正をしていた。悪いと思いながらも指摘できず、自浄作用がない状況に陥っていた」と述べた。ある職員は「事務局長は生え抜き。指示は絶対で逆らえなかった」と語る。

 ■不正の理由

 広幡会頭は記者会見でこう述べた。「補助金を返還しろと言われれば、3000万〜5000万円はすぐ返せる」。潤沢な資金を持つ能代商議所で、なぜ組織ぐるみの不正をする必要があったのか。ある商議所幹部は「会員の減少など将来に不安があったのではないか」と指摘する。

 県産業経済政策課によると同商議所の基金残高は、1998年まで1億8000万円程度で推移。現在の商工会館(元町)が完成した99年に約5000万円になったが、その後一気に倍増し、現在は約1億円。同課の担当者は「商議所の規模から考えると、『金はたくさん持っている』と認識はしていた」と話す。

 広幡会頭は、「事務局長が商議所の財布を預かる立場として評価を上げたかったのか。私的な着服の形跡はなく、理由は分からない」と首をかしげた。

 ■再発防止

 不正はごく最近まで行われていた。広幡会頭は、2007年度に日本商工会議所から補助金を受けた「メンタルヘルス事業」の補助金を辞退すること明らかにした。「補助金に見合う事業をしていなかった」というのが、その理由だ。

 再発防止策として、同商議所は、事務局長に県職員など外部の人材を呼ぶことや、商議所会員で作る「再発防止委員会」を設けることを決めた。

 しかし、再発防止の成否は不透明だ。広幡会頭は会見で、「組織ぐるみではないか」との問いをきっぱりと否定し、「正副会頭は非常勤。事業のすべてを把握しているわけではない」と反論してみせた。ある商議所会員は、「そんな理屈が世間で通用すると思っているのか。もっと危機感を持ってほしい」とあきれたような表情で注文を付けた。

            ◆

 広幡会頭の会見で、「領収書の偽造を指示した」と指摘された元専務理事兼事務局長の長岡聖一さん(60)は、「私が偽造を指示したのは絶対にあり得ないことで、商議所を辞めた私に責任転嫁をしていると感じる。そんな指示していたら(東北経済産業局に)投書なんてしない。名誉を傷つけられたので商議所を訴えることも考えたい」と憤った。

 長岡さんは、1992年から2005年11月まで事務局長を務め、00年4月からは専務理事を兼務していた。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/akita/news/20080307-OYT8T00066.htm