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2008年03月07日(金) 03時02分

地上げ急ぎ、光誉に変更 スルガ社「交渉早い」朝日新聞

 東証2部上場の「スルガコーポレーション」(横浜市)が所有していた都心のビルを巡る弁護士法違反事件で、同社が03年、不動産会社「光誉実業」(大阪市)に初めて立ち退き交渉を依頼した物件は当初、別の会社が担当することになっていたことが関係者の話でわかった。この会社は以前、スルガ社から別の物件を請け負った際、弁護士を使う適正な方法で慎重に時間をかけて処理したという。警視庁はスルガ社が、期間短縮を目指して光誉に切り替えた末、違法な交渉につながったとみている。

 関係者によると、スルガ社は02年11月に東京都新宿区新宿3丁目の商業ビルを取得し、入居者との立ち退き交渉を同区内の不動産会社に依頼した。スルガ社の岩田一雄会長(代表取締役社長を辞任)は「1年でやってくれ」と求めたという。

 請け負った不動産会社は、弁護士2人に依頼し、交渉を進めた。多くの入居者と裁判所の調停で解決を図ったため、約20の全入居者の移転まで約2年を要したという。

 この交渉と並行し、同社は、スルガ社が03年7月に取得した渋谷区道玄坂2丁目の商業ビルの立ち退き交渉も請け負う方向で協議が進み、事前調査を始めた。しかし、スルガ社から説明のないまま、依頼先が光誉に切り替わったという。

 光誉は、暴力団とつながりがある社長朝治博容疑者(59)=弁護士法違反容疑で逮捕=らが入居者との違法な立ち退き交渉を展開した。

 不動産会社社長は「スルガ社側にとっては私たちの交渉の進め方が遅かったのだろう」と話す。スルガ社の岩田会長も4日の記者会見で、「設定した交渉期間で比較的早く(立ち退き交渉を)履行してくれているところが評価されたと思う」と光誉に依頼した理由を述べている。

 光誉はその後、スルガ社から次々と依頼を受けて、ほかに都内の4物件の交渉も担当。光誉には1物件あたり数億〜十億円の報酬が払われたとみられる。一方、この不動産会社社長によると、02年に始まった新宿区のビルの立ち退き交渉でスルガ社から受け取った報酬は弁護士費用を含め6000万〜7000万円だったといい、光誉への資金提供が巨額だった実態がうかがえる。

 スルガ社は当時、バブル経済崩壊後の長引く不動産不況で業績が伸び悩み、不動産の整理・転売事業に乗りだしたばかりだった。こうした状況の中で収益増に向け、地上げを急いだとみられる。

 ■自民党の2支部に献金

 自民党衆院議員の菅義偉前総務相(神奈川2区)が代表を務める政党支部が01〜07年、都心のビルの地上げを巡る弁護士法違反事件で警視庁の家宅捜索を受けた不動産・建設会社「スルガコーポレーション」から、計104万円の献金を受けていたことが分かった。小此木八郎元経済産業副大臣(同3区)の政党支部も03〜07年に計60万円の献金を受けていた。菅議員は返金を検討しているという。

 政治資金収支報告書などによると、菅議員が代表の自民党神奈川県第2選挙区支部は01〜07年、年12万〜22万円の献金を同社から受領。小此木議員が代表の同第3選挙区支部は03〜07年に毎年12万円ずつ受けていた。

 菅議員の事務所は朝日新聞社の取材に、「報道されるまで事件をまったく知らなかった。指摘されている容疑が事実であれば決して許されないことであり、早急に返金する」と回答。小此木議員の事務所は「付き合いがあるのは確かで、事実関係を確認中」としている。 アサヒ・コムトップへ

http://www.asahi.com/national/update/0306/TKY200803060380.html