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2008年03月05日(水) 03時04分

4億年前に入り込んだ遺伝情報、哺乳類の脳生成に深く関係読売新聞

 何億年も前に脊椎(せきつい)動物のゲノム(全遺伝情報)の中に入り込んだ特殊な遺伝情報が、哺乳(ほにゅう)類特有の発達した脳を生み出すのに深く関係していることが東工大や理化学研究所などの共同研究でわかった。

 外から入り込んだ遺伝情報が、大きな進化を起こす引き金になった可能性を示す初めての証拠で、哺乳類誕生の謎を解明する手がかりとして注目されている。米科学アカデミー紀要に掲載された。

 研究チームは、進化の過程でゲノムに入り込み、その後は抜け落ちずに子孫に伝わる「レトロポゾン」という短い配列の遺伝情報を手がかりに、様々な動物のゲノムを調査。爬虫(はちゅう)類、鳥類、哺乳類に、特定のレトロポゾンが共通に存在し、哺乳類でのみ、脳組織の発達を促す役割を担っていることを突き止めた。

 このレトロポゾンが関係している脳組織は、ねずみのひげやもぐらの鼻先など哺乳類特有の感覚器官に反応する部分で、爬虫類や鳥類にはない構造をしている。レトロポゾンが入り込むことでゲノム上の領域が刺激され、脳組織の位置などを決める遺伝子が活性化されることがわかった。

 化石などから推定して、レトロポゾンは、約4億年前に脊椎動物のゲノムに入り込み、約2億年前に哺乳類の共通祖先の中で、高度な脳を発達させる機能を獲得したと見られている。

 同大大学院生命理工学研究科の岡田典弘教授は「遺伝子の研究では、突然変異の積み重ねなどの小進化に関係する成果は多いが、外から入る遺伝子で、体の構造に大きな変化をもたらすような大進化に関係する成果はなかった。進化の新しい研究手法になる」としている。

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080304-OYT1T00813.htm?from=main3