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2008年03月05日(水) 01時50分

調査捕鯨妨害 まるで海賊行為ではないか(3月5日付・読売社説)読売新聞

 ならず者がするような悪質な妨害だ。南極海を航行中の日本の調査捕鯨船に、米国の環境保護団体「シー・シェパード」が薬品を投げ込み、日本の乗組員ら3人が負傷した。

 この団体の船が寄港するオーストラリアと、船籍があるオランダに対し、日本政府が抗議したのは当然だ。国際捕鯨委員会(IWC)でも、再発防止策を真剣に検討すべきだ。

 シー・シェパードは環境保護団体「グリーンピース」から分離した。アイスランドの捕鯨船を爆破するなど、過激な行動で「エコ・テロリスト」の異名を持つ。

 3年前から、南極海の日本の調査捕鯨船団を標的にするようになった。スクリューを壊すため海にロープを投げ入れ、捕鯨船に体当たりすることもある。抗議の域を超えた暴力だ。まるで海賊行為ではないか。

 この団体は、日本船の南極海での不当な捕鯨を阻止するためだと宣伝している。だが、これはおかしい。クジラの生息状況を調べる調査捕鯨は、国際捕鯨取締条約で認められた正当な活動だ。

 この団体の船は、過去の不法行為でイギリスから船籍をはく奪されたこともある。オランダはなぜ船籍を与え、オーストラリアはなぜ寄港を許したのか。両国は日本側にきちんと説明すべきだ。

 船にはテレビ局のカメラマンが同乗し、妨害行為が全世界に配信された。シー・シェパードはこうした“実績”をPRして、多額の寄付金を集めているという。

 暴力で寄付を得るなど言語道断だ。だが、欧米などの反捕鯨感情も直視しなければ、問題は解決しない。不法な妨害には毅然(きぜん)とした対応をとり、同時に、粘り強く調査捕鯨の必要性を訴えていく努力が欠かせない。

 捕鯨のルールを決め、監視すべきIWCにも問題がある。

 IWC加盟78か国は、捕鯨を支持する36か国と反捕鯨の42か国に割れ、激しく対立している。ともに拘束力のある「加盟国の4分の3以上」の賛成が得られず、機能不全に陥っている。

 2006年と07年には、日本の調査捕鯨への妨害を非難する決議を全会一致で採択したが、その効果は全く出ていない。

 IWCは6日からロンドンで会合を開き、正常化に向けた議論を本格化させる。踏み込んだ再発防止策を話し合う好機ではないか。無法な行為は許されないことを全体で確認し、冷静な議論の出発点にしてほしい。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20080304-OYT1T00728.htm