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2008年03月05日(水) 23時48分

薬害エイズ最高裁決定要旨読売新聞

 薬害エイズ事件の最高裁決定の要旨は以下の通り

 行政指導自体は任意の措置を促すもので、これを行うことが法的に義務づけられるとはいえない。また、薬害発生の防止は第一次的には製薬会社や医師の責任であり、国の監督権限は第二次的、後見的なものであって、これらの措置に関する不作為が公務員の服務上の責任や国の賠償責任を生じさせる場合があるとしても、これを超えて公務員個人の刑事責任を直ちに生じさせるものではない。

 しかし、当時、非加熱製剤にはエイズウイルス(HIV)に汚染されていたものが相当量含まれており、これを使用した場合、HIVに感染してエイズを発症する者が出現し、いったん発症すると有効な治療法がなく、多数の者が死に至る可能性が高いこと自体は予測されていたこと、医師や患者が同製剤がHIVに汚染されたものかどうかを見分けることも不可能だったこと、国が明確な方針を示さなければ引き続き安易な販売や使用が行われる恐れがあり、その取り扱いを製薬会社に委ねれば、その恐れが実現化する具体的な危険が存在していたことなどが認められる。

 このような状況の下では、薬事行政上、その防止に必要かつ十分な措置を採るべき具体的義務が生じたといえるだけでなく、刑事法上も、薬事行政を担当する者には、薬品による危害発生の防止の業務に従事する者としての注意義務が生じたというべきである。

 そして、防止措置の中には、必ずしも法律上の強制監督措置だけではなく、任意の措置を促すことで防止の目的を達成することが合理的に期待できるときは、これを行政指導というかどうかはともかく、そのような措置も含まれるというべきである。

 被告は、厚生省におけるエイズ対策に関して中心的な立場にあり、厚生大臣を補佐して薬品による危害防止という薬事行政を一体的に遂行すべき立場にあったのであるから、必要に応じて他の部局等と協議して所要の措置を採ることを促すことを含め、薬事行政上必要かつ十分な対応を図るべき義務があったことも明らかで、本件被害者の死亡を被告だけの責任に帰すべきとはいえないとしても、被告の責任は免れない。

http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20080305-OYT8T00258.htm