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2008年03月04日(火) 03時07分

厚労省所管の財団人事、玉沢議員の秘書が介入読売新聞

 農相、防衛長官を務めた玉沢徳一郎衆院議員(無所属、比例東北)の政策秘書が2005年、玉沢氏の有力支援企業から依頼を受け、厚生労働省所管の財団法人理事長(当時)の辞任を求める怪文書の作成などにかかわっていたことが、名誉棄損事件の確定刑事記録などから明らかになった。  厚労省にも辞任を働きかけ、玉沢氏も当時の厚労次官に電話をかけていた。支援企業は財団から仕事を受注していた関係で、理事長人事への不当介入を試みたとみられ、協力した政治家側の姿勢が問われそうだ。

 この財団法人は、外国人研修生の受け入れ窓口となっている「中小企業国際人材育成事業団」(東京都江東区)。支援企業は印刷会社「ケービーエフ」(KBF、渋谷区)で、同事業団から研修生の航空券手配業務を受注していた。

 財団理事長が「事実に反する怪文書を財団関係者などに送りつけられた」などと告訴し、警視庁が捜査。KBF常務が名誉棄損罪で06年6月に略式起訴され、50万円の罰金刑を受けた。

 この事件の確定刑事記録や関係者の証言などによると、04年10月と05年1月に、財団を通して研修生を受け入れている会員企業2社が入管難民法違反で東京入国管理局の立ち入り調査を受け、研修生の入国が一時ストップした。

 KBF常務らは事態を打開するため、財団理事長の辞任を求めることにし、玉沢氏の政策秘書に協力を依頼。秘書は05年2〜4月、当時の厚労省の職業能力開発局長や事務次官に計3回面会した。そして、理事長の資質や行動に問題があるとして、「理事長はけしからんと言っている人がいる」などと非難した。

 さらに4月上旬には、玉沢氏が厚労次官に電話をかけ、「秘書の話をちゃんと聞くよう担当部署に言ってくれ」などと話していた。

 しかし、理事長が辞めなかったため、KBF側は4〜6月に5回にわたり、財団の会員企業や厚労省などの監督官庁、報道機関などに、理事長の資質や行動に問題があるなどとする文書を延べ約100通郵送した。これらの文書の中には「理事長は会員企業の入管難民法違反を知りつつ、認めていた」など、事実に反する記載があり、こうした点が理事長の名誉を棄損したと認定された。

 政策秘書は文書の作成でも常務から相談を受けて案文を作るなどしたほか、一部の文書については、玉沢氏の資金管理団体の事務所で封かんの作業をしたり、郵便局で発送の手続きをしたりしていた。

 KBFが財団人事に介入したのは、財団から随意契約で独占受注していた研修生の航空券手配業務が02年度に一般競争入札に移行し、利益が激減していたことが背景にあるとみられる。

 政策秘書はKBFへの協力について、「理事長は責任を取るべきだと考えたので、厚労省の局長のところに行ったり、文書作成で相談に乗ったりしたが、封かんはしていない。KBFには、相手にも人権はあると言った」と話している。玉沢氏は秘書を通し「記憶にない。私は関係ない」としている。KBFは「コメントしない」としている。

 玉沢氏は04〜06年、KBFの社長と専務から自らの資金管理団体や自民党支部に計1900万円の献金を受けている。政策秘書は玉沢氏が落選中の00〜03年にKBFから「社員」として給与を支給されている。

 KBFは昨年、防衛専門商社「山田洋行」の事件で東京地検の捜索を受けた社団法人「日米平和・文化交流協会」に入会しており、同協会が03年、旧防衛庁から受注した福岡県苅田(かんだ)港の毒ガス弾調査事業でも、同協会とKBFだけが入札に参加していた。また、玉沢氏も同協会の理事を務め、同協会の秋山直紀専務理事(58)は、玉沢氏の資金管理団体の事務所所在地で住民登録していた。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080303-00000068-yom-soci