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2008年02月28日(木) 02時31分

<保証金詐欺>男4人を逮捕へ…59歳の被害男性は自殺毎日新聞

 新潟県北部で農業を営む男性(59)から融資の保証金名目で現金3640万円をだまし取ったとして、警視庁捜査2課と新潟県警は28日、20〜30代の男4人を詐欺容疑で逮捕する方針を固めた。他にもこの男性から二千数百万円を詐取したとみられ、全容解明を進める。男性は昨年4月、遺書を残して自殺している。

 調べでは、男らは架空の金融会社を装い、06年12月〜07年4月、融資を申し込んできた男性に「手数料が必要」とうそを言い、計3640万円を振り込ませた疑い。

 男性は近所の知人ら約50〜60人から金を借りて、総額6000万円前後を振り込んだが、融資を受けられないまま、男らが名乗った会社名や経緯を書き残して自殺した。

 男らは既に、別の詐欺事件で警視庁に逮捕、起訴されている。男性に現金を振り込ませたことを認める上申書を提出しているという。【石丸整、黒田阿紗子】

 ◇仲間から借金…総額約6000万円

 「毎日のように別々の金を振り込まされる。4月13日もだめ」。昨年4月13日、新潟県北部に住む農家の男性(59)はこう書き残して自殺した。農作物の売価が下落し、生活は苦しくなる一方。農協からの借り入れも限界に達した。すがった相手は、融資保証金名目の振り込め詐欺グループの4人だった。振り込み続けた総額約6000万円はほとんど集落の仲間からの借金だった。小集落には深い傷が残った。

 約120世帯のうち3分の2が農家の集落で、男性はコメとタバコ栽培で生計を立ててきた。しかし、最高クラスとされるコシヒカリも、ピーク時で30キロ2万円だった売価が今は7000円以下。タバコも15年前の半額に落ち込んだ。支えは、後を継いでくれた長男の存在だったという。

 男性を知る農家は「長男の結婚前後から400万円もするコンバインやトラクターを買い始めた。将来に期待をもたせたかったんだろう」とみる。しかし、農協からの借り入れは限界に達した。

 06年12月、カタカナ名の会社に1000万円の融資を申し込んだ。家族には内緒だった。携帯電話に着信があると畑作業を抜け出し、話し込むようになった。融資の保証金を要求されていた。「午前10時までに100万円必要なんだ」。切羽詰まった表情で、仲間に数十万円単位の借金を頼むことが増え、口数は減っていった。融資は実行されなかった。

 <毎日のように明日融資するというが、今日まできた。手数料は全額返金すると約束したのに、毎日のように別々の金を振り込まされる。4月13日もだめ>。捜査関係者によると、自家用車から見つかった遺書には、借金先の名前と額も記されていた。

 男性の死後、金を貸したという人が続々と名乗りを上げた。全員が親せきのような集落で50〜60人が計約6000万円を貸していたという。「あいつもばかだが、だましたやつらはもっと許せない」と友人は唇を震わせる。

 家族は土地を離れた。集落に借金とやりきれなさだけが残った。(黒田阿紗子)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080228-00000010-mai-soci