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2008年02月28日(木) 20時50分

<大阪地裁所長襲撃>少年院送致の当時16歳に「無罪」毎日新聞

 大阪市住吉区の路上で04年2月に大阪地裁所長(当時)が襲われた事件で、強盗致傷などの非行事実で中等少年院送致となった当時16歳の男性(20)について、大阪家裁(大西良孝裁判長)は28日、「非行の証明が認められない」として、保護処分の取り消しを決定した。刑事裁判の「無罪」にあたる。男性は少年院に収容され、既に保護処分を終えているが、改めて無実を訴え、05年11月、処分取り消しを求めていた。検察側は「控訴」にあたる抗告受理申し立てを大阪高裁に行うとみられる。

 男性は捜査段階で自白し、大阪家裁での少年審判でも非行事実を認めたが、少年院に収容される当日(04年7月)に「捜査で自白を強要された」と無実を母親に告白した。01年4月施行の改正少年法では、保護処分を終えた後でも処分の取り消しが可能となり、男性は収容中に処分取り消しを申し立てた。男性は06年2月までの1年8カ月間、少年院に収容された。

 事件では、この男性を含む少年3人と成人2人が強盗致傷容疑で逮捕・補導された。成人2人が1審で無罪になったほか、男性の弟で当時14歳の少年(18)も差し戻し後の少年審判で「無罪」にあたる不処分決定を受けている。また当時13歳の少年(18)は児童自立支援施設での収容を終えたが「自白を強要された」と国などに賠償を求め提訴している。

 大西裁判長は自白の信用性について「適切ではない誘導、示唆、暗示による取り調べが行われたことが強く疑われる」と指摘。「犯行を認めたことは、自白の信用性を裏付けるものではない」と結論づけた。【川辺康広】

 ▽清水治・大阪地検次席検事の話 決定内容を精査し、上級庁とも協議の上、適切に対応したい。

 ◇「何でここまでつらい思い」

 家裁決定後、会見した男性は「すごくうれしい」と硬い表情をわずかに和ませたが「何でここまでつらい思いをしなければならないのか」と、警察の捜査を批判した。

 事件から約3カ月後の04年5月、大阪府警に逮捕された。「やったやろ」と捜査員に怒鳴られ、机を投げつけられそうにもなった。家裁審判で非行事実を認めたのは、二度と取り調べを受けたくないという気持ちからだった。1年8カ月間の少年院生活については「仕事もせず夜遊びをしていた自分が、まじめになるきかっけになった」と前向きに考えるようにしている。

 弁護人によると、大西裁判長は決定後「早く手続きから解放する方向で検討してほしい」と検察官に異例の言及をし、抗告しないよう求めた。男性は「まだ不安だが、大手を振って歩けるよう頑張りたい」と話した。

 ▽大阪地裁所長襲撃事件 04年2月16日午後8時35分ごろ、大阪市住吉区の路上で発生。帰宅途中の鳥越健治・大阪地裁所長(当時)が襲われ、現金約6万3000円を奪われた上、腰の骨を折る重傷を負った。大阪府警は見張り役を含め5人組の犯行と断定。当時29〜13歳の5人(成人2人、少年3人)を逮捕・補導した。今回の男性を含め5人全員が無罪を主張している。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080228-00000127-mai-soci