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2008年02月28日(木) 19時27分

<恐怖の記憶>酒を飲むと逆に強く残る 東大研究チーム解明毎日新聞

 恐怖体験をさせたラットにアルコールを注射すると注射していないラットより恐怖の記憶が長く残ることを、東京大の松木則夫教授(薬品作用学)らが明らかにした。松木教授は「嫌な出来事の後、酒を飲んで忘れようとしても、逆に記憶が強く残ることになっているのかもしれない」と話す。米国の精神生理薬理学誌に発表した。

 研究チームは、囲いに入れたラットに電気ショックを与えた。翌日同じ囲いに入れると電気ショックがなくても恐怖の記憶がよみがえり、ラットはすくんで動きを止めた。このラットをいったん外に出し、アルコールを注射する群と、生理食塩水を注射する群の二つに分け、再び囲いに入れ観察した。

 その結果、アルコール群は、1週間経過しても注射前より強くすくむ状態が続いた。2週間たっても、囲いの中ですくむ時間は1割ほどしか減らなかった。一方、2週間後の食塩水群は、すくむ時間がアルコールを注射したラットの半分近くだった。アルコールを注射したラットに比べ、恐怖の記憶が薄まっている状態とみられた。

 ただ、楽しい記憶については、ラットでの実験が困難なため確認できていないという。松木教授は「記憶は、獲得後にいったん固定され、また思い出して不安定な状態になった後、再び固定されるという過程を繰り返し、徐々に薄まる。(深酒のときの記憶があいまいなように)記憶獲得時のアルコールは獲得を阻害する働きがあるが、再固定ではアルコールに逆の効果があったため驚いた。嫌なことを忘れるためには、酒を飲まずに楽しい記憶で上書きする方がよいのかもしれない」と話す。【永山悦子】

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080228-00000091-mai-soci