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2008年02月28日(木) 00時05分

「新証拠」有無は謎のまま 懐疑と期待、日米で交錯中国新聞

 二十七年前に起きた銃撃事件の殺人などの容疑で元会社社長三浦和義容疑者(60)を電撃逮捕したロサンゼルス市警。未解決事件を急展開に導いた「新証拠」はあるのか。米捜査関係者が「納得できる証拠があるはずだ」と期待する一方、最高裁で三浦元社長の無罪が確定した日本では「古い事件を処理しているだけでは」と懐疑的な見方も広がっている。

 ▽20年前の逮捕状

 二十五日に開かれたロス市警の記者会見。リック・ジャクソン捜査官は、一九八八年に米当局が出した逮捕状に基づき、殺人と共謀の容疑で三浦元社長を逮捕したと発表。「証拠に基づき発行された逮捕状は依然有効だ。それが重要なことだ」と述べ、新証拠については詳細な回答を避けた。

 銃撃実行犯についての質問は「コメントしない」と一蹴(いっしゅう)。しかし「実行犯が乗った車の描写が、目撃者と三浦氏の説明では食い違う」などと言及し「関係者からの再聴取に力を入れることもある」と、新証拠の一端が目撃証言であることをにおわせた。

 事件当時、現場から二百五十メートル東にある水道電力局ビル八階にいた職員が銃撃事件を目撃している。現在は、ロサンゼルス市当局などが入るツインビルが間にそびえ立ち、水道電力局ビルから現場を見通すのは困難だ。

 ▽新証言の存在疑問

 「新しい事実があっても確認のしようがない。目撃者の洗い直しと言っても、二十年たって出てくるということは常識的にありますかね」と三浦元社長の日本での裁判で主任弁護人を務めた弘中惇一郎弁護士。新証言の存在には首をかしげる。

 弘中弁護士らも、現場周辺でビラをまくなどして目撃者を捜したことがあるが、成果はなかったという。

 「言ってみれば、古い事件を順次処理しているだけでは。状況を変えるような証拠が出てきているとは、彼(三浦元社長)も思っていない」

 ▽けむに巻く捜査官

 一方、三浦元社長を聴取したことがある元ロス市警のロン長谷川氏は「個人的な見解」と前置きして「世論もある。一度日本で無罪になった事件で逮捕するのだから、誰が見ても納得できる証拠があると思う」と話す。

 ロス市警が新証拠について言及しなかった点についても「手元にある証拠を言うわけがない。今はセンシティブな(微妙な)時期だ」と理解を示した。

 記者会見でジャクソン捜査官は「未解決事件の捜査進展には新証拠が必要では」との質問に「必ずしもそうではない」と記者団をけむに巻いた。ロス市警はその後も、新証拠の有無について口を閉ざしている。

http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200802280091.html