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2008年02月27日(水) 03時05分

サイパン判事「どう進むかわからぬ」 三浦元社長逮捕朝日新聞

 81年に米国ロサンゼルスで妻を殺害したとして米自治領サイパン島で逮捕された元雑貨輸入販売会社社長三浦和義容疑者(60)の身柄を、逮捕状をとっているロス市警に移送すべきかどうか——。移送の適否を決める司法手続きがサイパンでとられるのは初めて。サイパン地裁で担当するデイビッド・ワイズマン判事は「どう進むのか分からない」と話している。

三浦和義容疑者の司法手続きの見通しについて話すデイビッド・ワイズマン判事=26日午後、サイパン・ススペのサイパン地裁で

 日本で無罪が確定している三浦元社長は、ロス市警の求めに応じた現地当局に身柄を拘束された。米国では、他州の司法制度への信頼関係を前提に捜査に協力し合う関係があっても、身柄の拘束など自由を縛るようなケースについては、司法管轄権をもつそれぞれの地域で慎重に判断すべきだとの考え方がある。それに基づき、自治領であるサイパンでは移送をめぐって手続きを必要とすることが数年前に立法で規定された。

 サイパン地裁で25日に開かれた手続き初日の法廷には元社長が姿を見せた。ただ、地裁は保釈をめぐる判断をするだけで、移送の適否には踏み込まなかった。地裁では、元社長が求める公設弁護人をつけるかどうかを判断する審問が近く開かれる予定だが、前例のない審理の見通しはついていない。早期移送を求めるロス市警は、近く担当者をサイパンに派遣する。

 日米両国で注目されている事案とあって、手続きには、検事局側、元社長の弁護側ともエース級の法律家が主張に臨んでいる。

 サイパン検事局はジェフリー・ウォーフィールド主任検事を担当者に起用。法廷では、元社長について「逃亡中の容疑者」にあたるとして移送すべきだと主張した。

 一方、元社長が弁護人を私選でつけなかったため、弁護人役を担ったのは、公設弁護人事務所の主任を務めるアダム・ハードウィック弁護士。「空港での今回の逮捕は違法だ」などと述べた。

    ◇

●日程「まるで競馬予想」 ワイズマン判事 一問一答

 26日に朝日新聞の取材に応じたワイズマン判事は、競馬の予想にたとえて審理の行方の不透明さを語った。一問一答の要旨は次の通り。

 ——移送の適否に関する司法手続きを担うことになったが。

 「司法管轄が異なる地域への容疑者の移送についての法律は数年前にできたばかり。この裁判所で扱うのは初めてだ。個別のケースについて話すことはできないが、検事局、弁護人それぞれの主張に基づき法律を解釈していくことになるだろう」

 ——この裁判所で判断するのはどんなことか。

 「当事者が有罪かどうか、ということではないのはお分かりだろう。今のところ、(三浦元社長は)『逃亡中の容疑者』というのが検事局の立場だ。そのことの何が問題なのかは今後の検事局の主張にかかっている」

 ——移送をめぐる審理にはどのくらい時間がかかるのか。

 「あなたはどの馬が次の競馬で勝つか当てることができる? 確かに3月以降の日程を入れたが、私にもどう進むのか分からない。これからもいろんなことが起こるだろうし」

 ——同じ事件で日本では最高裁で無罪が確定している。

 「そのことは知っている。でも、ここと日本は異なる国だ。そうとしか言えない。法律家であればこうしたことを扱うこともあるだろう」

 ——三浦元社長は弁護人が公費でつく公設弁護人の適用を求めている。

 「この制度は資力がなく、弁護士費用が払えない人のためのものだ。(三浦元社長が妻の収入として言った)年間3万ドルは子どもが成人している場合は、この制度の適用外だが、ほかの状況も考慮すべきであり、担当の保護観察部門の検討結果を参考にして判断する」 アサヒ・コムトップへ

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