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2008年02月27日(水) 08時02分

三浦容疑者逮捕 ロス市警会見 けむに巻く「新証拠」産経新聞

 【ロサンゼルス=松尾理也、サイパン=荒井敬介】1981年にロサンゼルスで起きた銃撃事件で、ロサンゼルス市警は25日、三浦和義容疑者(60)逮捕後の初の記者会見を行い、同容疑者がサイパンに頻繁に渡航しているとの情報を得た2、3年前から再捜査を本格化させていたことを明らかにした。注目される新証拠の有無には言及せず、「必ずしも新証拠が必要なわけではない」と微妙な言い回しをしながら裏付け捜査を徹底させる方針を示した。

 誰もが「終わった事件」と思っていた中、ロス市警はなぜ逮捕に踏み切ったのか。決定的な新証拠が得られたのか。会見でメディアの関心はその点に集中した。

 会見したのは未解決事件(コールドケース)担当班でこの事件を約20年捜査してきたというリック・ジャクソン捜査官ら3人。同捜査官は「新証拠についてはコメントできない」とクギを刺しつつ、微妙な言い回しをした。

 「未解決事件に手を付けるには、新証拠が必ずしも必要というわけではない。(科学捜査の進歩によってもたらされた)DNAや指紋といった新証拠が未解決事件の解決につながるケースは多いが、それだけではない。逮捕状を取った容疑者を5年、10年後に捜し出し、裁きにかけるということもあり得る」

 直接的なコメントを拒否しつつ、遠回しながら「新証拠がなくても逮捕は可能」を強調したかったのではないか−と思わせる説明ぶりだった。

 ■自信?

 今回の逮捕状は1988年5月に発行された。秘密裏にされていたものではなく、取得当時は会見まで開かれた。

 80年代に捜査に当たったジミー・サコダ氏の著書にも会見シーンが出てくる。同書は「逮捕状の根拠は強力で、問題はひとえに、当時日本で収監中だった三浦容疑者の日米間での身柄引き渡しにかかっていた」と述べている。

 米当局は逮捕状取得当時から三浦容疑者の有罪に絶対的な自信を持ち、問題は実際に身柄を得られるかだけ、とみていたことがうかがえる。

 25日の会見でジャクソン捜査官はこう述べた。「当時われわれは米国で訴追できるよう身柄引き渡しを日本に求めたが、結局のところ、日本の当局と協力し、裁判を日本で行うという結論に達した」

 これらを総合すると、容疑や証拠の組み立て、裁判の行方に絶対的な自信を持っていることまで、米当局の姿勢は88年時点から変わっていない可能性がある。

 ■執念?

 今回の逮捕劇には、ロス市警や当時の捜査関係者の執念を強調する見方から、空港手続き時に過去の逮捕状との照会が偶然ヒットしてしまった「出合い頭」説まで多様な憶測がかわされた。

 この点についてはジャクソン捜査官は比較的突っ込んだ説明を行った。「再捜査を本格化させたのは2、3年前に、三浦容疑者がサイパンに頻繁に渡航しているとの情報を得てから」といい、「出合い頭」でなかったことを強調した。

 執念の捜査をうかがわせるやりとりも。「もともと会見を予定していたのか? 日本のメディアの反応が激しかったため急遽(きゅうきょ)開いたのか?」。この質問に、意味深長にこう答えたのだ。

 「88年の経験から、いずれこんな大騒ぎになるということは分かっていた」

 ■移送は?

 サイパンの裁判所で進められているロスへの移送手続きでは、既に3月5日と10日に期日が指定された。5日に予備的尋問、10日に本格的に審理される予定だが、三浦容疑者には手続きを拒否する権利がある。

 仮に同容疑者がロス市警移送手続きを拒否した場合、移送は大幅に遅れる可能性がある。裁判所が認めた三浦容疑者の拘置期間は45日。大幅に手続きがずれ込んだ場合、予想外の混乱につながる可能性も否定できない。


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